乙郎さん

はちどりの乙郎さんのレビュー・感想・評価

はちどり(2018年製作の映画)
3.0
理屈の映画だと思うし、キム・ボナはテーマとリアリティの作家なのである種の映画好きには好まれないだろうという印象を受けたものの、不思議と観終わって心に残り続ける印象。おそらくこれは個人的に重なる部分も大きい。
とにかく閉塞感。徹底的に主人公に寄り添いピントをずらすカメラ。閉塞を表現するのに閉塞でもって行う方法は二重表現とは思うものの、この映画が個人の物語であり、余白を残さないことで安易な感情移入を拒む目的もあると感じる。
ヨンジ先生が出てきた時の、特に撮り方を変えているわけでもないのに少しは閉塞が破られたような感じが良い。これは世界の解像度の話なので、ヨンジ先生の登場ですべてが解決するわけではない。ただ、ウニの世界を観る解像度が変わるだけ。
この映画の中では、虐待を行う人物であれ100%の悪もしては描かれない。世界は嫌になるくらい豊かで、解像度を得ることが幸せになるもは限らない。単純な言葉でたやすくまとめることを許さない。そのような作品だと思う。
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