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はちどりのnihoのレビュー・感想・評価

はちどり(2018年製作の映画)
5.0
まだ半袖着てたとき。はちどりを観終わって梅田のTOHOシネマのエレベーターに乗り、1Fに着いてドアが開いたとき、わたしと一緒に出てきた中年のサラリーマンがおんなじように空を見上げて、ぬるい風に吹かれたんです。これがこの映画の全てじゃないかって思うんだけど、以下は蛇足でわたしの感想。

ユリイカだったかな、キム・ボラ監督のインタビューで14歳という年代の理想化と揶揄が語られているのを読んだ。
大人は簡単に厨二病とかいって自分の世界に閉じる感じを揶揄するくせに、自分の14歳頃のことは厨二病の側面をしばしば忘れて、理想化して思い出す、だから14歳のときに感じていた本当を撮りたい、的なこと。
そんな思惑のとおり、キム・ボラは14歳なんじゃないか、と思うくらいその年代の「うまくいかない/うまくできない」姿が丁寧に描写されている。周りの出来事とウニの心の成長スピードが異なるのがわかる。

物事が終わってから(たまにそれはよくない結果となるけど)、ああ、そうだったんだ、となるときはある。あっていい。
まだ多くの自分の身を守る言葉を持たないウニと同じくらい、説明的でない純文映画ですごくよかった。

これから続く長い人生は、目を凝らしてもなかなか見えない。ウニ、君はきっとこれからも辛い。でも、いけ、はちどりのように、全身で。とかつての14歳だった自分を重ねて祈る。
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