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ブラック・ウィドウのHrtのレビュー・感想・評価

ブラック・ウィドウ(2021年製作の映画)
4.3
ブラック・ウィドウがレッドルームで訓練を受けたスパイの総称だったと本作で初めて気づく。
彼女たちは支配者による抑圧の対象。
女性ヒーローによるフェミニズムを大々的に表出させた作品になったが、この流れは間違いなく2〜3年前からハリウッドで起こっている一連のムーブメントの写し鏡だろう。
女優主演、単独の女性監督がついにMCUでも実現した形だ。
スカーレット・ヨハンソンが体現したヒーロー像の集大成的作品でもある。
フェーズ1〜2は女性的なカーヴィーラインが強調されていたが作品を追う毎に役がブラッシュアップされスーツも洗練されてきた。
『アベンジャーズ/エンドゲーム』で壮絶な最期を遂げたことが界隈では論争の引き鉄となったが、本作を観て自分も少し納得できた気がした。
つまるところ、ナターシャは2つの擬似家族を取り戻したかったんだろうと思う。
エレーナ、アレクセイ、メリーナもサノスの“スナップ”によって消えてしまっていたのだろうと。
本作で描かれるエモーションはスパイとしてアメリカはオハイオ州に潜伏していたときのこと。そのひと時だけでもナターシャやエレーナにとっては本物の家族だったことだ。
その家族の再結成からスパイに相応しいvsレッドルームの始め方はこれ以上ない流れだった。
シーン、または国が変わるたびに地名がスクリーンいっぱいに映し出される演出は『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』や『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』のルッソ兄弟のそれを汲むものだろう。
天空の城ラピュタのごとく雲の上に鎮座するレッドルーム。
その支配者ドレイコフは典型的な白人権力者の風貌で、MCUに登場する人物としては今までにいなかった「普通の人間の悪」感があった。
ひたすらレッドルームの追撃を受けるスリラーは大傑作『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』を想起させ、特にタスクマスターの動きは今までのMCUコンバットの総ざらいになる。
裏を返せば目新しいアクションは墜落していくレッドルームからの脱出&降下戦くらい(それでもかなりインパクトはあった)。
だからこそフェーズ4の第1作に相応しかったのかなと思う。
肉弾戦の重さは女優アクションとしては『アトミック・ブロンド』以降の流れを感じ、受け身とかどうやって取ってるんだろう?と心配になる場面が何度かあった。
その重みを肌で体感する為にも劇場、特にIMAXシアターがめちゃくちゃ機能している。結果的にDisney+と同時公開にはなったがここまで公開延期を繰り返した意味はあっただろう。
オルガ・キュリレンコはロシア、ウクライナ系フランス人女優として名が知れ渡り過ぎているのでオープニングクレジットで彼女の名前を目にしたときにどんな役で出てくるのかおおよそ推測できてしまった。
あとレッドガーディアン役デヴィッド・ハーバーのロシア訛り英語はちょっと大袈裟だったかな。
チャーミングなキャラクターなので再登場を期待したい。
楽しかった。
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