けーな

家族を想うときのけーなのレビュー・感想・評価

家族を想うとき(2019年製作の映画)
4.5
同じケン・ローチ監督の「わたしはダニエル・ブレイク」を観た時にも、世の中の不条理さにいたたまれなかったが、今作も、同じ想いが込み上げてきて、胸が詰まる。

もともと、とても仲の良い家族なのに…。その家族のために、一生懸命仕事をしているだけなのに…。

不条理な社会のからくりの中で、八方塞がりになって行く様子が、とにかく見ていて辛かった。しかし、いい映画を観たと強く思う。

妹が、良かった。可愛いかった。終盤の大事なシーンには、涙が出た。一緒に配達に行くシーンもいい。反抗期の息子も、本当は、いい子なんだよね。最初、声が、やたらと低くて、驚いたけど。

全員が、無名の俳優や、素人を抜擢したそうだ。主演のクリス・ヒッチェンは、40歳を超えてから俳優になった人らしい。配送業者のめちゃくちゃ嫌な上司は、現役の警察官で、ケン・ローチ監督が、この役は、警察官にやらせると言って、オーディションをしたそうだ。警察と言えば、途中で出てくる警察官のセリフが、素晴らしい。胸が熱くなる。仲間のドライバー達も、実際のドライバー達が演じたそうだ。

原題の「Sorry We Missed You」は、宅配便の不在票に書かれている決まり文句なのだそう。この映画の、このタイトルは、不在票の決まり文句に、家族を想う気持ちも掛けた、とても深い意味のあるタイトル。日本の不在票に、この決まり文句がないから、家族を想う意味だけの邦題になってしまっているのが、残念だが、仕方ないのかもしれない。
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