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プライベート・ライアンのmomokaのレビュー・感想・評価

プライベート・ライアン(1998年製作の映画)
4.7
第二次世界大戦下のノルマンディー上陸作戦を描いた本作。大号泣した。

戦争映画を沢山鑑賞している訳ではないので、あまり他作品と比べることはできないが、冒頭の上陸作戦の描写は凄まじいものがあった。音響や迫力はもちろんのこと、兵士の犠牲により海が鮮血に染まっていくシーンは目に焼き付いて離れない。(結構惨い描写があったりするので、グロテスクなものが苦手な人はご注意を⚠️)

ただ単に、戦争の過激さや無惨さを伝えるのではなく、登場人物それぞれの気持ちも丁寧に描写されているので、思わず感情移入してしまう。

生き延びることさえも大変な時に、軍の上層部から”ジェームズ・ライアン”という人物を連れて帰国しろという任務を任されことになった、トム・ハンクス演じるミラーが率いる中隊。

最初は、ライアンを何故助けなければならないのかと疑問に思っていた中隊たちも、徐々に心境に変化が現れる。ミラーや、ミラーの右腕的存在のマイクが言っていたように、ライアンを連れて帰国したら、胸を張って故郷に帰ることができるという言葉は心に深く残った。きっと、彼らの中でライアンはひとつの希望になっていたのだろう。

また、指揮官であるミラーが部下を亡くしてしまった際は、亡くなった人数を数えるのではなく、その犠牲があったから10倍や20倍の人を救えたのだと割り切っているとマイクに告げるシーン。ミラーはそのように話していたが、部下が亡くなった際の表情を見る限り、割り切ることなんてきっとできていなくて、本当に苦しさとやるせなさで幾度となく胸が押し潰されそうになってきたのだろうと悲しみに襲われてしまった。

ラストのミラーとライアンの会話は嗚咽…。本当に泣かせにかかってきている…。切なくてつらすぎてどうすればいいのか分からなくなった。思わず余韻に浸ってしまう。

結局、戦争というものは勝者にも敗者にも、救われた者にも亡くなった者にも、与えるものなんて何も無いのだと考えさせられる。自らの心身の大切な核となるものを奪われ続ける一方だ。国のための名誉の死なんてものは存在しないし、家族は生きて帰ってきてほしいという気持ちしかないと思う。

本作では、つらく苦しい描写が多いが、前線の橋の辺りで敵軍が来るのを待っている際に、エディット・ピアフの悲しげな音楽を聴きながら、兵士たちが他愛もない話をしているシーンがとても好きだった。戦争というと国同士の戦いというように捉えてしまいがちだが、それぞれに名前があり、生活があり、人生がある、かけがえのない人間同士の戦いであるということ。決して忘れてはならない。

それにしても、トム・ハンクスの出演している作品は良作のものが多いと再認識。本作でも瞳だけで全てを語ることができる演技力が光っていた。それだけ力のある俳優さんだから、素晴らしい作品に出演できるんだろうな。凄いことだとしみじみ💭
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