回想シーンでご飯3杯いける

鉄道運転士の花束の回想シーンでご飯3杯いけるのレビュー・感想・評価

鉄道運転士の花束(2016年製作の映画)
3.5
あまり深く考えた事が無かったんだけど、ハンドルによる回避行動が可能なトラックやタクシーの運転手が人を轢くと業務上過失の罪に問われるけど、電車はレール以外のコースを走れないからなのか、罪に問われない。だから、1人の運転士が人を轢いたとしても、そのまま同じ業務に就くのは十分にあり得るという事。本作は、そんな運転士の葛藤をコミカルに描いたセルビア映画だ。

60歳のイリヤは定年間近の鉄道運転士で、これまでに28人を轢き殺している。そんなイリヤが線路で出会い面倒を見るようになった少年シーマも19歳になり、運転士として働く事になるが、いずれ人を轢き殺してしまう事になるのが恐ろしくてノイローゼ状態になってしまう。そんなシーマを救うためにイリヤが選んだ救済法は?

コメディの題材にするのはどうなの?って一瞬思ってしまうけど、先にも書いた通り運転士が回避行動を取れないのなら、彼等もまた被害者の1人と言って良いはず。実際、僕達も人を轢いた人間が運転する電車に乗っているはずなのだ。

運転室に愛犬を同乗させる牧歌的な風土を背景に描かれる、コミカルかつ温かみのある一風変わった作品。同じセルビアのエミール・クストリッツァ監督の作品もそうだけど、東ヨーロッパには独自の死生観に基づく作品が多いような気がする。