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黒い画集 ある遭難のkojikojiのレビュー・感想・評価

黒い画集 ある遭難(1961年製作の映画)
3.6
1961年 監督:杉江敏男 原作:松本清張
2022.09.19視聴-426
●伊藤久哉(江田)
●土屋嘉男(槙田)

 東宝映画黒い画集シリーズを3本観たが、この作品は面白い。
 この映画が、事件であることを語り出すのは最後の最後。それまでは観客はどうなるのだろうと思うしかない。BGMだけが不穏な雰囲気を醸し出すが、なかなか、確信に触れない。
 綺麗な鹿島槍の景色とロケーションの醍醐味で事件のこともすっかり忘れて一緒に山歩きをしている気分だ。

 さすがに清張。ゼロの焦点の列車のトリックは有名だか、この映画もよく取材された作品でなるほどと思う場面が繰り返し出てくる。実際、清張は登山もしていたのだろうか?登山もせず、この作品を書くのは難しいだろう。
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 ある銀行の店長代理である江田をリーダーとする三人のパーティーが鹿島槍で遭難する。経験のない浦橋は一命を取り留めたものの、ベテランの岩瀬が命を失ってしまう。岩瀬の姉の真佐子は、初心者の浦橋が生き残り経験者の弟が亡くなったことに疑問を抱く。 
 
 ある日真佐子が江田に従兄の槙田を遭難現場まで案内してほしい頼んできた。
 この突然の申し出に裏があることはわかるが、そんなそぶりは最後のカットで江田を見る視線に感じるだけ、それも微かに。

 槙田も現場を歩きながらなかなか本心を語らないが、次第にそれらしきことは言いだす。真綿で首を絞めるように。このあたり観客を焦らしに焦らす。そして、ついに槙田がこの事件の推理を語り出す。

 面白い!

 主人公を演じる伊藤久哉主演の映画は初めて観るが、計算高く、冷徹な上司役にぴったりで映画を面白くしている。
 真実を語り終えた後の不気味な笑顔がなかなかいい。

 
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