ヨーク

トムとジェリーのヨークのレビュー・感想・評価

トムとジェリー(2021年製作の映画)
3.7
トムとジェリーはそんなに詳しくないんだけど面白かったですよ。基本的にはお馴染みのスラップスティックなコメディであり、お洒落で粋なニューヨークの雰囲気もありで楽しい映画でした。ただストーリーのメインはトムとジェリーの二匹ではなくクロエ・グレース・モレッツ演じるケイラが引っ張っていくことになるのでトムジェリガチ勢はクロエよりトムとジェリーをもっと映せよ! とはなるかもしれないっすね。まぁ俺はクロエ好きなんで全然問題なかったですけど。
お話はクロエ演じる向上心旺盛なケイラがニューヨークで成功する夢を見ているのだが現実はそんなに甘くはなくロクな仕事にありつけないところから始まる。またそれと同じくトムとジェリーもニューヨークに出てきて新しい生活を始めようとするが中々上手くいかない。そんな折、ケイラは超有名セレブの結婚式の会場であるホテルのロビーでそのホテルの求人に応募してきた優秀っぽい女性と出会うのだが、あろうことか彼女は口八丁でその応募者を丸め込んで優秀な経歴の描かれた履歴書を掠め取り、身分を偽ってそのホテルの求人に採用されてしまうのだ。悪い奴ですねー。普通に犯罪じゃん、となるのだがそこからお話が動いてそのホテルにジェリーもやって来て住みついちゃうんですよ。ホテルにネズミは不味いだろってことで超優秀な経歴を持ってやって来た期待の新人ケイラにネズミ駆除の任務が任され、彼女はネズミには猫だろってことでニューヨークの雑踏で行く当てもなかったトムを拾ってジェリーをやっつけさせようとする、というお話ですね。
まぁそこからはいつものトムジェリといった感じになるのだが、予告編とかでは有名セレブのホテルでの挙式をトムジェリがぶっ壊してしまって、その台無しにしてしまったお詫びに今度は二匹で協力して式をやり直して成功させる、という紹介をされてるんですよ。まぁそれは全然間違いではないのだが、その予告だと式をぶち壊すのが冒頭から20~30分くらいで行われてそこからトムとジェリーがリカバーしていくような映画だという印象を受けませんかね。俺はそう思っていたんだけど。でも実際には映画の尺はケイラとトムによるジェリー捕獲作戦に半分以上が使われて結婚式が台無しにされたときはもう1時間越えてたくらいじゃないかなぁというくらいだったんですよね。まぁ時計見ながら計ったわけではないのであくまで俺の体感で、ですけど。
なのでストーリーはあって無いようなものでした。ではそれがマイナスだったのかというと全然そんなことはない。最初にクロエ演じるケイラがお話のメインになる映画だと書いたが、そもそも本作のお話自体が30~40分もあれば十分収まる程度のものでしかないので残りの尺はトムとジェリーのいつもの追いかけっこに費やされるんですよね。そこ面白かったなぁ。だって多くの場合は本筋と関係ないシーンを延々やられたら尺稼ぎだなんだとマイナス評価の対象になるじゃないですか。でも本作ではそここそが面白いわけですよ。トムとジェリーによる破壊的かつ殺し合いといっても差し支えないほどのバカバカしくも真剣な追いかけっこが。
そこガッツリやってくれたからもう満足ですよね。観たかったものは大体観れた感じです。キレのいいジェリーの煽りとそれに激昂するトム。トムへの鬼畜の如き所業がやりすぎなところまで高まってきたら逆にトムからの反撃が来てピンチに陥るジェリー。そこら辺のバランス感覚はもう職人芸って感じで素晴らしいですね。そこにクロエ演じるケイラの自己中心的かついい加減なキャラクターも加わるのでお話なんてなくても飽きないんですよね。ぶっちゃけ結婚式がどうこうとかもどうでも良かったなという感じはする。
まぁその結婚式もいい感じにオチが着いて、ケイラちゃんも一回り成長して身分詐称の件も突っ込まれて終わるので映画としても可もなく不可もなくってとこでいいんじゃないでしょうか。とてもお気楽に楽しめる作品でしたよ。
お話なんてなくてもいいんじゃないの、横道に逸れてもいいんじゃないの、むしろその横道が楽しいんじゃないのって感じがいいっすね。まぁその横道も面白く描かれていたからいいだけで、つまんない描写だったらクソ映画になっちゃうわけですけどね。そういう意味では客がトムジェリで観たいものをキッチリ提供してるんだからやっぱ職人的な映画だよな。
面白かったですよ。
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