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WinnyのTSのレビュー・感想・評価

Winny(2023年製作の映画)
3.8
【天才を踏み潰す国家】80点
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監督:松本優作
製作国:日本
ジャンル:ドラマ
収録時間:127分
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 2023年劇場鑑賞14本目。
 今から約20年前に発生したWinny事件を取り扱った実話映画。恥ずかしながらWinnyについては何も知らないまま鑑賞。かの有名なYouTubeが席巻する少し前に、日本の天才がそれに近いものを開発しようとしていたにも関わらず、国家の圧力に潰されてしまうという苦い現実。この国は一体何をしたいのだろうか。憤ると同時に呆れてしまうほどの、恐ろしい展開。貴重な作品だと思いました。

 元東京大学大学院の助手であったプログラマーの金子勇は、ファイル共有ソフトであるWinnyを開発していた。しかし、Winnyには違法ダウンロード、アップロードなどの著作権侵害に関わる重大な問題をいくつも抱えていたのだが。。

 かの動画共有プラットホームのYouTubeができたのは2005年。対してこのWinnyはそれより数年も早く完成していたのです。どれくらいのものなのかは実際使ったことがないのでわかりませんが、もしこの不当逮捕事件がなく、金子が自由にWinnyを運営できていたのならば、YouTubeは存在していなかったかもしれません。今や世界中で有名なYouTube。端的にいうと、日本国家は将来を担う天才プログラマーを自らの手で始末したということになるでしょう。そこには著作権法違反というシビアなハードルがあり、確かに法治国家だから、それはそれで大事なことであるとは思うのですが、あまりにも理不尽。こんなことをしていたら金子が言うように、日本中の技術者は萎縮して何も開発しようとしなくなります。それは日本国家の停滞であり後退でもあります。果たしてこんなことでいいのか。日本の悪い習性を垣間見た気がしました。

 金子勇を演じるのは東出昌大。金子は如何にも理系の人間といいますか、まあこれは誰でもそうなのですが自分のツボにはまったら止まらなくなる習性があるようです笑 でも自分の好奇心からここまで結果を出せるのはとてもすごいことです。その様子は法廷内でも表されます。もちろんこういう人をサポートする人は必要ですが、絶対に根絶やしにしてはいけない。今回のこの事件は、臭いものに蓋をするように、国家が意図的に介入してきていると言わざるを得ません。今作の半分近くは法廷での争いとなるためそこも見どころ。しかし、やはりみていて歯痒い。なぜなら、本来日本の将来のことを第一に考えなければならない国が、どうみてもその姿勢をとっていると言えないからです。

 結局は為政者の政治こそが正義なのです。民主主義という都合の良い言葉を振り翳し、結局は自分たちのしたいようにやっていく。これでもいつまでたっても国民は幸せになれないでしょう。今回も、弁護士が必死に証拠を集めて、日本の将来性を説いているのに、まるで聞く耳を持たない。法治国家とは、民主主義とは何なのかと改めて考えさせられてしまいます。

 非常に胸糞悪く、後味もパッとしない映画なのですが、こういう映画はやはり量産されるべきでしょう。国家なんて100%正しい存在なんかではない。そう願ってはいますが、到底そう思えません。せめて、この映画が生まれたことによって金子さんの努力や夢が少しでも報われてほしいと思うところです。
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