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静かな雨のhayatoのネタバレレビュー・内容・結末

静かな雨(2020年製作の映画)
3.9

このレビューはネタバレを含みます

2、3回は観たくらい大好きな作品。

先に宮下奈都さんの原作を読んでから映画を鑑賞したのだけど、原作の温かくて優しく、かつ少し切ない雰囲気が映像でもしっかりと表現されていて凄く良い。

大賀演じる主人公の行助が、衛藤美彩さん演じる、小さなたい焼き屋を営むこよみと出逢い、恋に落ちることから物語は進んでいくのだけど、全体的にゆっくりと流れる二人の温かな時間や、美しく切り取られた風景描写、キャストそれぞれの演技に存分に魅了される。

事故の影響で短時間の記憶を失ってしまうという設定は正直そんなに珍しくはないと思うんだけど、どんなに一緒に過ごしても翌日になるとその記憶がなくなっている彼女に何とか平静に振る舞おうとする行助が観ていて凄く苦しかったし、辛くもあった。

主演の大賀と衛藤さんの二人の演技はもちろん、脇を固めるでんでんとか三浦透子さんの存在も凄く良かった。(個人的にでんでん=怖い役のイメージがあったんだけど、今作のでんでんは優しい大学教授の役で、その存在感が温かかった)
あと、ちょい役なんだけど、酔っ払いの役を演じた村上淳が凄い印象に残ってる。

特に大きな事件みたいなのは起こらず、ただゆっくりと二人を中心に時間が流れていくんだけど、光をはじめとする中川監督が美しく映し出す風景や、ずっと観ていたいような二人の温かくて少し切なくもある生活模様に、心を掴まれて気付けばあっという間に観終わっていた。

終盤の付箋のシーンで心がギュッとなって涙が溢れそうになった。
観た後はたい焼きをベンチに座りながら食べたくなるような、そんな素敵な映画。
多分これからも時々観返す作品だと思う。
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