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猿楽町で会いましょうのRenのレビュー・感想・評価

猿楽町で会いましょう(2019年製作の映画)
4.0
ポスターとタイトルを見て『街の上で』とか『花束みたいな恋をした』に似ているのかな?と思いきや始まったのは地獄のR15ラブストーリー。好き。

恋愛映画でR15なんて、『ヒメアノ〜ル』みたくなったらどうしようかと思っていたけどその心配はなかった。森田くんの背中越しにタイトルコールも出ない。というかやってることは内田けんじ監督っぽくて面白かった。

『花束みたいな恋をした』の麦と絹には、自身を武装する術としてサブカルチャーがあったけど、ユカにはその場を凌ぐ嘘しかなかった。『花束 ~』が光を帯びた終末へ向かうのに対し、今作は泥沼の地獄へ向かっていく。観ている側はユカのことをきっと好きになれない(同情はするかもしれないけど)。主観と客観の間でうろうろして自分がどんな人間なのかも不明瞭、謝罪より先に嘘ついて盾突いて自衛に走る女性。世の中こんな人だらけとは到底思えないしこうあるべきだとも全く思えないけど、まあこんな人も居るに決まってるよね、という一つの事例を直視できた気がした。

一対一で「あなたはどういう人間か?」と問われたとき私はどう答えるか考えてしまった。この映画は「あなたって何者?」を問い直す映画だ。
この人こそは、この人こそはと信じていた人達のタガがどんどん外れていくという快感に似た嫌悪。特に数少ない今作の良心だと思っていたあいつ、気持ち悪すぎて怖すぎた。観た人みんなと誰が一番おかしいと思ったかについて語らいたくなった。

実は主演二人を映画で観るのは初めて。金子大地の角度によってはFukaseとか藤原季節に見える感じが好き。石川瑠華のちょっと素人っぽさの残る演技も作品に完璧に馴染んでいて凄く良かった。
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