いの

犬王のいののレビュー・感想・評価

犬王(2021年製作の映画)
3.8
三種の神器、そのうちのひとつは見つからない。海底に沈んだ草薙の剣を引き上げたところから物語は始まる。


今年に入ってから、アニメ『平家物語』と出会い、その原作:古川日出男訳『平家物語』を数ヶ月かかって読み、その間に『犬王』を読み、鎌倉殿の十三人も視聴していて現在に至っている。とにかく今年は平家物語だ。難しいことはよくわかんないし言葉にものぼらせられないけれど、きっと今が敗者の物語と向きあう時なんだろうと思ってる。敗者の物語と向きあうってことは、語り継がられているおはなしだけじゃなく、語られなかった物語を掬い取ろうとすることであり、聴き取れなかった声に耳をすまそうとすることなのかもしれない。それは権力に抗する行為でもあるからホントは覚悟が必要なんだろう。
原作読んだ自慢をしちゃったけれど、読んだというだけで詳しいことは全然わかってません。この映画は観る人を選ぶような気もするけれど、平家物語なんて全然知りませんって方が楽しいって言ってくださったらうれしいな、ってまた偉そうなことを書いてしまった💦


三種にちなんで、三点セットで今作を表現するとしたら

・異界×異形×異端

・どろろ×もののけひめ×犬王

・友魚×友一×友有

・犬王×長い手×能

・琵琶×ロック×舞台

・湯浅政明×野木亜紀子×松本大洋

って、3つ揃えればなんでも書けますね(すみませんっ)


犬王の楽しさ。呪われて生まれてきたようなものなのに、それをものともせず屈託なく生き抜く力。体が変化していくのも楽しめる強さや逞しさや軽妙さ。特に姫カット時の犬王に惹かれました。友魚の場面は、ブルーグレーの色彩。友魚と父とのやりとりもいい。そこに目を見張るような桜の美しさとか、足利義満と謁見する際の部屋の豪華さとか。松本大洋が描く人物たちは、闇も業も全部背負っていて、なんだかそれがとてもいい。 これはアニメーションでなければ成立しなかった映画だと思う。自由自在に。
いの

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