ゴシちゃん

生きるのゴシちゃんのレビュー・感想・評価

生きる(1952年製作の映画)
5.0
黒澤明監督の超名作
海外でリメイクされた事もあり、なにかと最近話題になっている作品です。
今回、4Kリマスター版のソフトが発売された事もあり、全編通しては40年ぶり2度目の観賞

初見はそれこそ40年程前、名古屋の栄にあったエンゼル東宝にて「天国と地獄」との2本立てリバイバル上映
見終わった時、黒澤映画の中では最高の余韻と深い感動を受けた作品なのですが、物語の前半にあたる自分の余命を知って迷い苦しむ場面はけっして観て楽しいものではなく、今までソフト化されても、またBS等で放送されてもあまり観ようという気持ちになれませんでした。

自分の余命を知った主人公が、残された時をいかに生きるか?
何年かおきにヒット作がでる、最近では「世界の中心で・・・」や「君の膵臓を・・・」等、昔からよくあると言っては申し訳ないですが、そんな内容の作品
それも主人公は美少年でも美少女でもない、ただの真面目で何の面白みもない中年オヤジです。
そんな内容を、あの「七人の侍」や「用心棒」の黒澤明がどう料理するのか?
まあ、観てやろうか...
なんて調子で劇場に乗り込みました(笑)

まるで落語の展開のように主人公が自分の病気を知ってしまう場面は、コミカルにさえ感じてしまいますが、それからは病気を悩み、自分の今までの人生を悔やみ、迫る死と孤独にただ悩み苦しむ主人公が描かれます。
ボツボツと小声で話す主人公の声は聞き取り難く、観ている私もつらかった...

中盤になって、やっとの事で主人公は自分の生きる意味を見つけます。
主人公がハッピーバースデーの歌声に送り出されて階段を降りる場面からの展開は、ぜひ皆さん予備知識なしでご覧になってみてください。

あっ!と驚きました。

流石は黒澤明!こうきたか!

そしてラストシーン
主人公が「美しい・・・」と眺めた夕日
その夕日が映画を観ている私に問いかけてきます。

「あなたは今、生きていますか?生きているんですか?」

これぞ名作、それしか言いようがありません。
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