tanayuki

生きるのtanayukiのレビュー・感想・評価

生きる(1952年製作の映画)
3.2
悪いけどまったく同情できない。勤勉だったかもしれないけど、自立できない赤ん坊のようなおじさんを生み出した、教育のせいというにはあまりにも幼く無責任なおじさんの、どうしようもない自己憐憫。「死んでいた」と評されてもしかたもない、思考停止を死ぬ間際に思いっきり反省できる時間がもててよかったね、としか。

最後の最後に、覚悟が決まってホントによかったよね。会社のせい、職場のせい、役所のせい、制度のせい。そうやって責任回避し続けた先に、何が残った???全部個人の責任に帰すには重すぎる問題がないとはいわないけど、制度がきっちりしてると思われてるアメリカでも結局、腹を括った個人の力に頼らざるを得ないという事実を知るとと(マイケル・ルイス「最悪の予感」を参照のこと。コロナ対策に完全に失敗したアメリカにあって、みずからのテリトリーで孤軍奮闘した名もなきヒーローたちが出てくる)、かわいそうなのは、「つまり」の言い訳おじさんではなく、言い訳おじさんに見向きもされなかった市井の人たちなんだよね。

「つまり」感動するポイントはそこじゃないってこと。申し訳ないけど、もはやそんな生き方を持ち上げていい時代じゃないんだ。いや、わかるよ、時代背景を考えれば。でも、前を向くなら、そこで腑に落ちちゃったらダメじゃない?

おじさんの死を前にしても自分と向き合えなかった他のおじさんたちには、残念だけど、もうかける言葉もない。自分の人生より組織の論理を優先して、あなたたちは何を得られたの?

△2022/02/11 Apple TV鑑賞。スコア3.2
△2015/05:13 iTunes鑑賞。スコア3.6
tanayuki

tanayuki