亘

見下ろすとそこにの亘のレビュー・感想・評価

見下ろすとそこに(2018年製作の映画)
3.7
【無関心】
とある集合住宅。ある夜階下から叫び声が聞こえる。住民たちはそれぞれの反応をする。

ヒッチコックの『裏窓』のように集合住宅の人々の様子を窓越しに眺めて描くショートフィルム。人々は思い思いに過ごし、叫び声に対してもそれぞれ違った反応をする。気にして見下ろす人、窓を閉じる人、まったく気にしない人、写真を撮る人。とはいえ誰も助けに行かなくて、しかもこれを撮影してる人も話し合って何もしない。みな面倒に巻き込まれたくないのだ。


観客は「無関心って駄目だよね」と住民を批判しながら見るけど、一方で「状況がどうなるのだろうか」「誰かしら助けるのか」とどこかワクワクもしているだろう。結局本作の中の住民たちと変わらないし、何ならスマホで撮影している少女たちと変わらないと思う。2017年パルムドールを受賞した『スクエア 思いやりの聖域』にも似ていると思う。

終盤、パトカーのサイレンが近づく。きっと住民は、「誰かが呼んでくれた」と自分で関与しなくて済んだと落ち着いているかもしれない。でもこのサイレンはこの集合住宅ではなくて別の場所に行くものかもしれない。いざ来なかった場合にも住民たちは無関心を貫き通すのだろう。
亘