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観覧車のdm10foreverのレビュー・感想・評価

観覧車(2018年製作の映画)
3.8
【欠片(かけら)】

BSSTO(ブリリア~)にて配信中の短編アニメ作品。

何といっても映像のクオリティがかなり高くて驚いた。
細部まで丁寧に拘って作り込まれていて、決して短編にしておくにはもったいないくらいのレベル。
(横で観ていた息子は「何これ?ディズニー?」って言ってました)

で、肝心のお話・・・
――観覧車の絵を描いたり作ることが好きな少年が、彼の人生を一変させる奇妙な生き物と出会う(Filmarksあらすじより)
・・・そうだっけ?まぁ箇条書きにすればそんな感じか・・・(笑)

ある夜、一人の少年が「観覧車のおもちゃ」の前に座って悪戦苦闘していた。
組み立て式のその観覧車は最後の部品は欠けているため、なかなか上手くはまらず、次第に少年のイライラは頂点に達してしまう。
不意に力任せに捻じ込もうとした部品が弾けて、その拍子に完成間近だった観覧車は粉々に壊れてしまう。

その観覧車はお父さんとの思い出の品であり、お父さんと自分を繋ぐ大切な宝物。

お父さんを「写真の中の存在」として描くことで、この二人には何かしらの距離(別離)があったことがわかるんだけど、恐らくそれはもう戻ることがない永遠のお別れだったのかなと思うんですね。

それが観覧車に込められたメッセージですよね。
観覧車を「永遠のメタファー」と考えれば、『壊れた観覧車」は少年にとっては『止まってしまった時間』の象徴ということなのかもしれない。
そして、彼の心の中に生まれるいくつもの「不安」「絶望」「悲しみ」がモンスターという形で具現化され、そして彼を追い詰めていく。
観覧車の部品、一つ一つが彼の描くモンスターの絵の上に置かれていたことからも、このモンスターたちは「彼の心のパーツ」だったのかもしれない。
それは「少年とお父さんの思い出を形成するパーツ」。
そしてそれが粉々に弾け飛んでしまうという状況は、孤独の中にいる少年が現実に押しつぶされそうになっているようにも見えました。

単純に「お父さんに会いたい」「お父さんがいなくて寂しい」という事以上に、「お父さんがいないという現実」を受け止めきれないような感じなのかな・・と。

小さな子供にとって「お父さんがいなくなる」っていう事は恐怖だと思うし、それを現実として受け止めるにはまだまだ人生経験も足りないしね・・・
ただただ怖いよね。
そんな気持ちがあの「モンスター」となって現れたんだろうね。

でも、あのモンスターたちは「お父さんとの思い出の欠片たち」
もしかしたら彼らは独りでいる少年をずっと見守っていたんじゃないのかな・・・。
でも、なかなか現実を受け止められない少年の心は今にも壊れそうな状態。
迫ってくるモンスターから逃げ込むように飛び込んだ屋根裏部屋は、むしろモンスターが導いた場所だったのかもしれない。

そしてそこには、どうしても最後の1ピースがはめられなかったあの観覧車が・・・。

主人公が少年なので「破壊と再生」というものを背負わせるにはちょっと幼すぎるけど、むしろそれよりは「経験をして大人になっていく」という、ちょっぴりビターなジュブナイルものとも言えると思う。

ラストの映像もホントにキレイ。
スペインアニメも侮れないって感じです(笑)

調べてみたら、やっぱり海外の映画祭(シッチェス国際映画祭2018(スペイン)、SPARK Animation(カナダ)-最優秀監督賞、Screamfestホラー映画祭(アメリカ)-最優秀短編アニメ賞等)でも評価されてるみたいね。
なるほど。
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