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ガリーボーイのhikarouchのレビュー・感想・評価

ガリーボーイ(2018年製作の映画)
4.3
いやーーこれはイイ映画だねえええ。

え、インドのラップ?ってとっつきにくい感じあるけど、全くそんなことなく。むしろインド映画特有のクセみたいなのは極限まで排除されていて、欧米映画を見慣れた人間にもものすごく見やすかった。

インドにおけるムスリムという、マイノリティな生い立ちが、ヒップホップカルチャーとも相性が良くて素晴らしい。ていうかこれ、実話なんだよね。

ムラドの書くリリックには、彼の日常で感じる様々なことが結集しているから、それがビートに乗ってラップになるとグッと胸に迫ってくる。

画作りが非常に巧みで、ふとしたところで見せるスラムの絶望的な貧困の状況とか、明るく振る舞いつつも地獄のような日常が、極めて映画的な文法で描かれている。

「パッドマン」でも感じたが、インドにはまだまだ古い慣習が色濃く残っている。特に女性に対する扱いは欧米から半世紀以上ずれている感じがある。かと言って、欧米的なものの見方で上から見下げても良いものか。彼らには彼らの歴史と文化とそれに基づく合理性があるかも知れず、違うからダメというのでは安易に過ぎるとか思ったりしたな。きちんと勉強して、ダメならダメと自分の言葉で語れないとね。

最後、ムラドが父親の人生を否定するようなやりとりには胸が痛んだな。多分そうじゃないんだよね。父親の生きた時代と今は、インドももちろん変わってる。今では手を伸ばせばギリギリ届くところにある自由も、昔はどれだけ伸ばしても届かなかったんだよ。たぶん。もちろん酷いことをした父親ではあるけど、彼は時代の犠牲者でもあるんじゃないかな。
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