NEWおっさん

サヨナラまでの30分のNEWおっさんのレビュー・感想・評価

サヨナラまでの30分(2020年製作の映画)
3.5
「上書きして手に入れる思い出」

カセットテープを再生している間だけ死んだミュージシャンと入れ替わり、解散した自身のバンドを再生させようとする青春SF音楽映画。

これは良かった。体を貸している颯太が抱える葛藤と、とにかくバンドを再生させたいアキとの対比から、颯太自身もバンドをやりたくなってくる心の変化が上手く描かれていた。話としては結構王道だが、とにかく爽やかで瑞々しさ溢れた感じを堪能できました。

自分が気に入ったのは曲を上書き=思い出を上書きして次々と塗り替えていくアキのこだわり。なんでカセットテープなんだろうと疑問に思ってたけど、ちゃんと理由があったのも好感触。このテの映画だと形が残ってる思い出を消すな、みたいな感じになりそうなんだが、新しい思い出を上書きするという発想はなかなか新鮮だった。この設定が終盤に効いてくるのも上手い。ラストの演奏前のアキが颯太のマネをするトコは感動したよ。

なんか若手俳優達の音楽青春映画というとキラキラ系な感じを想像させるが、上手いこと良い方向に作用したキラキラ系でした。幕引きもそこで終わりと一瞬思ったが、なかなか振り返るとにくい終わり方だったわ。序盤のかったるい話運びが若干マイナスだが、総合的に見たら結構な良作だった。

あ、あと劇中の曲も良かったよ。北村匠海と新田真剣佑も普通に違和感なくアーティスト然としててそこは問題なし。まあ北村匠海は元々アーティストだしな。