こたつむり

SEOBOK/ソボクのこたつむりのレビュー・感想・評価

SEOBOK/ソボク(2021年製作の映画)
3.2
♪ いい日があるから生きて行こう
  生きて行こう、生きて行こう…

予告編の印象とは違う作品でした。
もっとSFアクション寄りの映画だと思っていたんですが、筆致はかなり硬派。「なぜに人は生きるのか」をまじめに追求した物語でした。

しかも、足取りは地道で堅実。
静かに寄せては返す波のように“癒し”の効果も兼ね備えていました。正直なところ、激辛な韓国映画を予想していると裏切られます。断片的には韓国らしい要素もあるんですが。

仕上げたのは『建築学概論』のイ・ヨンジュ監督。確かに”根底に流れる優しさ”は共通していますね。どちらかと言えば洋画に近い雰囲気も納得です。

ゆえに丁寧で好感触な作品…なんですけどね。
物語が目指しているところ(作品を支配している価値観と言い換えても可)に寄り添うことができませんでした。小骨が喉の奥に引っ掛かったような違和感が離れなかったのです。

思うにそれはスタンスの違い。
根本的な部分で相容れないんですよね。
ネタバレになるから深くまで言及はしませんが、物語の着地点に“監督さんが抱く美しさ”を感じてしまったのです。でも、それが納得できませんでした。

勿論、僕の思い込みである可能性も大。
明確に言葉で表現されたわけではありませんからね。

余談となりますが、僕は「生きることとは望みを叶えることですじゃ」と、両手が右手の老婆のセリフが人生の原則だと思っています(究極的に煮詰めた場合ですけど)。

仮にその望みが他人から見て刹那的でも、洗脳された結果でも、選択肢がない中で選択したことでも、自身が“覚悟をもって決断した”望みは尊重されるべき、だと考えます。

そこに異を唱えたら価値観の強要。
うん。僕は他人からの押し付けが嫌いなのでしょう(面倒くさい奴ですね)。

まあ、そんなわけで。
真摯な姿勢で人生に向き合っている物語だからこそ、観客も真摯に捉えたほうが良い作品。その結果、受け入れなかったとしても…鑑賞した価値は大いにあると思います。夜が長くて思いに耽るような日にオススメです。
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