SHIROHITO

セレブの種のSHIROHITOのレビュー・感想・評価

セレブの種(2004年製作の映画)
4.3
さすがスパイクリー。強いテーマ性。面白い。
数人で観て、酒飲みながら論じたくなる映画。


以下、修正するのがめんどくさいので十年以上昔に書いていた感想を転載。---------------------------------------------------------------

思っていたよりユーモアを含んだメリハリのある映画だった。けど実際はとても深く答えなんか出ない賛否別れる内容のもの。
ストーリーをざっくり要点だけ言うと、
超エリート大学卒、エリート会社勤務のルックスも悪くない男が1人。
彼は働いている大企業の不正を告発するも首になり、それによって資産も凍結され文無しになってしまう。
そして子供が欲しいが子供を作れない大勢のレズビアンの女性たち。
彼女たちはレズだという理由から養子縁組みに拒まれ、公共の精子バンクも不正がある事実から信用していないために、実際に見て納得できるより良い精子ドナーを求めていた。

そこで行われたのが、主人公のエリート男性が精子を提供する代わりにレズビアンの女性たちは種付け料として大金を払うというビジネス。

元々正義感の強かった男性はこのビジネスに手を付けてしまったが次第に苦しみ始める、その一方で女性たちはとめどなく彼を頼りに、高級で信頼できる『セレブの種』を買いにくる。

そうしてる間にこのビジネスが悪意を持った人間の手によって世に知れ渡り、男性は倫理観の問題により世間の注目の的に祭り上げられ、そして逮捕され裁判にかけられる。

そんな内容の作品。



ん。。。。。。。。
ある程度常識を持っている誰しもが、この映画をみてこのテーマに対して、自分の考えがまかり通るかどうかを図るのは容易なようで難儀なんじゃないかと思う。

実際見れば『こんなのこの男が悪い』と簡単に言うのを戸惑ってしまうシーンが劇中でいくつも出てくる。

刑務所の房の中でも、刑務官には『何人の子供のパパなんだ?』『楽しく大金稼げて羨ましいよ』なんて鼻で笑われ一日中いびられる。
だがその房の中には、壁の至るところにレズビアンの女性たちの送ってきた感謝の手紙や身ごもった子供の超音波写真が所狭しと貼られている。
男性もそれを一つ一つ眺めては自分の子供一人一人を愛していた。
彼女たちは母親になれた喜びと幸せでいっぱいで、裁判の際にも傍聴席は彼女たちで埋まっていて、男性の無罪を願っている。


一体何がダメで、何が正しいのか。

わからない。
当然俺の中では『子供』を主体で考えるのが一番大切と考えているから、『愛し合った2人』の愛が形になって生まれた宝物が『子供』であると思う。そこにはなんの邪念もなくただ待ち焦がれる想いと、2人の溢れる愛で包まれて子供は生まれてくるべきだ。
だからこの映画に出て来る沢山の子供は将来的に成長してから事実の経緯を知り悲しむことになるから、あってはならないことだと思う。
その反面、子供のいる家庭を築きたいってレズビアンの女性たちに我慢しろ、とは口が裂けても言えない難しい問題もある。

どんなに考えてもわからない。



ただ俺が確実に感じたのは、

『セフレ』『売春』『虐待』が当たり前になった、『愛』の枯れ果てたこの時代に、

『愛』『倫理観』『道徳心』とは何なのかを問いかけられ、それと向き合える映画だったってこと。

内容について自分なりの答えが出るかは難しい。多分考えることに意味があるんだと思いたい。
SHIROHITO

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