ShinMakita

ハリエットのShinMakitaのレビュー・感想・評価

ハリエット(2019年製作の映画)
2.0
1849年、メリーランド州。黒人奴隷のミンティは、夫ジョンと共に主人であるブローダスに願い出る。どうか、2人の子供だけは奴隷とせずに自由黒人としてほしいと…しかし願いは聞き入れられなかった。母も妹もこの家の奴隷として虐げられている。しかも、約束の任期を過ぎても自由は与えてもらえず、家族も子も一生奴隷のままだと明言されたのだ。やがてブローダスが亡くなり、息子ギデオンが主人となった。ギデオンはミンティを南へ売ろうと考えているらしい。それは家族との永遠の決別を意味する。だからミンティは脱走を決意する。すでに他家で働き自由黒人となっているジョンに迷惑はかけられないから、独りで逃げるのだ。深夜に森を駆け抜けるも、朝になり追っ手に挟まれ、橋から転落し川の激流に呑まれたミンティ。ギデオンは彼女が死んだと判断したが、ミンティは生きていた。奴隷制のないフィラデルフィアに渡った彼女は、奴隷解放組織「地下鉄道」の存在を知る…



「ハリエット」。


以下、ネタバレか死か。


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黒人差別や女性差別を扱った映画を観るにあたって、俺が「面白かった」かどうかを判断する基準は、説教臭くないこととエンタメ度が高いこと。本作は、断言しますけど、エンタメ度100パーセントです。

いやあ、マジか! と驚いたのは、本当にこんな人がいたのかよ、というところ。ただ奴隷の身から逃げただけでなく、奴隷たちの逃走を手引きするため何度も南部に潜入し、成功させる技術と勇気、そして信念。アガる要素満載の半生記ですよ。南北戦争時には黒人兵を率いて作戦を指揮し、一挙数百人の奴隷を解放したという、まさにレジェンドです。怯える子犬のように弱々しいミンティが勇ましい車掌モーゼことハリエットへと変貌していくクダリはヒロイン覚醒の高揚感。宿敵ギデオンとの対決も用意され、これまさにエンタメアクション映画の王道じゃんと拍手しちゃいました。
ただ惜しいのが、その王道のストーリーを語る演出が平凡で、エモーショナルに振り切れていなかった点。音楽使いは素晴らしいし、カナダルート議論時の演説は良かったけど、逃走のサスペンスやアクションにもっと凝りが欲しかったなぁ。むしろ5話くらいのミニシリーズにして、晩年までじっくり描いたほうが良かった気もしました。まずまずオススメの一本。
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