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ルース・エドガーのShinMakitaのレビュー・感想・評価

ルース・エドガー(2019年製作の映画)
1.8
小児科医のエイミーとその夫ピーターは、高校生の息子ルースと暮らしている。ルースは2人の実子ではない。戦火の国で孤児であった黒人少年を養子として迎え、ルースと名付け育ててきたのだ。品行方正、成績優秀な青年となったルースは、エイミーたちの誇りである。しかしある日、エイミーは社会科のウィルソン先生に呼び出される。先生が言うには、ルースが出したレポートに「問題は銃で解決する」という記載があり、しかもロッカールームに洒落にならない量の火薬を含んだ花火を隠しているというのだ。破壊思想を持つ危険な子かもしれない、というウィルソン先生の危惧に憤慨するエイミーだったが…


「ルース・エドガー」。


以下、ネタバレ・エドガー。

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優等生の仮面を被った犯罪者モノ…とジャンル映画を期待してみると外れますのでご注意を。この映画は、そんな単純な話じゃありません。観た後も咀嚼が必要な難しい作品です。


黒人差別問題を扱った映画が「ゲット・アウト」で進化して、先日の「ハリエット」という王道から本作のような変則モノまで出てきて、幅が広がったなぁと感じますね。この映画では、ます黒人vs黒人という対立構造に興味を惹かれます。ウィルソンの考える「黒人かくあるべし」思想は、ローズという妹を抱える負い目と黒人差別の体験から「信念」になっているんです。対してルースの「肌の色なんて関係ない、俺は俺」理論は、白人夫婦に育てられたせいもあるのかもしれないけど、現代的かつ現実的です。両者とも間違ってないんですよ。でも相容れない。今のアメリカの黒人ソサエティもこういう構図なのかもなぁなんて感じました。

母親役といえばこの人、ナオミ・ワッツの演技も良いし、夫役ティム・ロスのやや情けない感じもぴったり。ですが、なんと言ってもウィルソン先生を演じたオクタビア・スペンサーが最高。あれだけ貫録満点のルックスなのに、ルースに追い詰められていく姿にはかなり気の毒になってしまいました。こじんまりしてるけど、社会派ドラマとして観る価値大いにある一本。
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