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シン・ウルトラマンのstのレビュー・感想・評価

シン・ウルトラマン(2022年製作の映画)
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まず抱いた印象として、フェチズム的かつ懐古主義的なデータベース消費だなあと。いかにも庵野秀明が好きそうなモチーフ群、カット割と画角。禍特対のバッジ(とマスコットキャラ) が何度も象徴的に登場することによって、映画自体が反復的な表象(or過去のイメージ/オマージュの繰り返し)であるとキッパリと宣言しているようにも見える。
エンドロール見た感じBGMとか過去作そのものだしOPからして引用に溢れる。シン・ゴジラへの自己言及含め。『野生の思考』が出てくるのも60年代っぽさがあって、斎藤工と長澤まさみの最初の方の掛け合い(1人で生きているから自分で意思決定すると言う神永と、社会は色んな人で成り立っていると諭す浅見)も実存主義vs構造主義的な当時の思想潮流に見て取れなくもない。
以後、雑感。新宿のTOHOで観て、その後歌舞伎町のラーメン二郎に行ったんですが、『シン・ウルトラマン』って「ラーメン二郎」感あるよなあ、と。作り手も消費者側も一定のクリシェによって支えられていて、(仮に世論の潮流からは外れていても)そこから外れたものは作らないし、消費されない。取り沙汰されてる本作の「気持ち悪さ」とか「時代錯誤さ」とかもその限りではなく、当人は(作り手も受け手も)それらについて自覚的でありながらも自分の庭で面白いことをやってるだけ、と言うか。個人的には好きなんですけどね。フェティッシュに溢れる昔ながらのオタク映画が衰退していくのを想像すると悲しいかも。いずれにせよ本編は言わずもがな、冒頭数秒のみにしか登場しない禍威獣たちをはじめ、この大作の制作陣には敬意を表したい。
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