左衛門

シン・ウルトラマンの左衛門のレビュー・感想・評価

シン・ウルトラマン(2022年製作の映画)
3.2
面白かった🪐

自閉的世界の恐ろしさと、そこへと健康的に向き合わなければならない責任の明るさを感じた。
真っ先に、東京埼玉連続幼女誘拐殺人事件の犯人を思い起こした。これは70年代〜、科学の発展が生活の現代化に直に結びついていた頃、空想科学にかじりついていた世代、いわゆるオタク第一世代の表現だと思う。表現はどうにでも転ぶ。方向が違っただけで、根の部分では同じ自閉に支配されている。
会話というより、台詞らしい台詞のみでやりとりする科特隊のシーンはオタク文化への自嘲か、それとも生の表現か。本人確認のためにいちいち数値化されたデータとの照合が必要な社会への皮肉と捉えられるシーンもあり、もはやコミュニケーション不全の症状はオタクめいた個人間の問題ではなく、現代の日本社会全体が抱える問題なのだと痛感した。顔を見れば誰だかわかるのに、そこに証拠が欲しい。そこに、無闇矢鱈に好きだと確認したがるあまり、安心したがるあまり、ネチョネチョして振られるモテないオタク心理がキチンと働いているのも興味深い。巧妙に科学信奉とからめられているが、信奉は信仰とさして変わりない、土から離れた歪んだ社会がSFとして表現されている。

こじらせてムズカシそーな本、ブルーバックスとか科学者の新書とかをなんとなく読んでわかったつもりでいる高校生が考えたようなシナリオで終わるかと思いきや、最後には父性とその葛藤が描かれる点は素晴らしいと思ったし、まあ、そこにぶつかる以外ないとも思ったので納得した。

見どころは、役どころが同じポジでも完全にスベっていたシン・ゴジラの石原さとみさんとは違い、長澤まさみさんがそこにズバッとハマっていたところか笑
山本耕史さん演じるメフィラス星人も、津田健次郎さんが声を当てていたザラブもとてもよかった。日本人はもう戦国武将やなんかを演じるよりよっぽど異星人を演じた方がしっくりくるんじゃないかと思う🤪

社会は脱戦後、そしてこれからは脱オタクが進むだろうと感じた良作に3.2てん🙆‍♀️
左衛門

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