左衛門

エセルとアーネスト ふたりの物語の左衛門のレビュー・感想・評価

3.3
英国文学史への興味の延長として鑑賞。以前鑑賞した「イリュージョニスト」とはまた違った、でも根のところに似た感覚を想像させるアニメーション作品。学校の図書室に必ずあった「スノーマン」の作者、レイモンドブリッグスが描いた同タイトルの絵本を映画化したもの。

第一次大戦後のイギリスが、とある夫婦の日常を通して描かれる。当初はナチスに期待したイギリス国民の生活に根ざしたリアルと、そこから繰り返されるはずのなかった二度目の世界大戦へと進んでゆく様も描かれる。
新聞の記事に一喜一憂し、我がこととして、政治と生活とそこからの声が有機的に結びついている市民感に、輸入ではない骨太な民主主義のあり方を見ることが出来る。
息子の疎開先の平和な景色に、とても戦時中とは思えないとつぶやくセリフは印象的。高島野十郎が描く風景画を見た時のように、戦時中だからといって世界が一様にゲルニカめいていたわけではないのだと教えてくれる。

どこにも何にもSFや妙な自己主張はない。何か突飛なアイデアにしがみつかなければ成立しなくなっている病的な日本のアニメーション映画に疲れた時、こういうものやジブリが胃に優しい。

素敵な作品でした。3.3てん🇬🇧☕️
左衛門

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