左衛門

トゥルーノースの左衛門のレビュー・感想・評価

トゥルーノース(2020年製作の映画)
2.9
鑑賞してよかったと思える作品。

ただ、特殊?な作品の形態というか、なんと言うか。確かな実話ものとは言いきれない、でもドキュメンタリー作品であることには違いない。彼の国で本当に起きている、あるいは起きていた悲痛な現実が表現されているはずなのだが、それもアニメーションとストーリーという形式に詰め込まれた結果、よくある話感というか、なんとないインスタントみを感じずにいられなかった。作品のこの形態の功なのか罪なのかわからないが、本作に対してどう向き合っていいのかが最後までわからなかった。

ラス・カサスの「インディアスの破壊についての簡潔な報告」を読んだ時も同じようなことをおもったが、このような、誰かの目を通して見た惨状の受け止め方というのは、大変に難しい。事実であることには違いないと思うし、そこに疑いはない。しかしまた、こういった状況というのが、人間の発明した正義や悪といったあまりにも弱々しい観点だけで語り尽くせるとは到底思えない。
作中で表現されている、未来や生きる力を奪われる人たちの姿は確かに悲痛なのだが、それ以上に、こうした状況が世界のどこかで、彼の国以外でも起きているであろうこと、そしてその責任は間違いなく、自覚の有無に関わらず、経済や価値観といったフィクションをめぐる国家間の競争の中にあるという事実にこそ、身につまされる思いがした。

2.9てん🇰🇵
左衛門

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