さうすぽー

1917 命をかけた伝令のさうすぽーのレビュー・感想・評価

1917 命をかけた伝令(2019年製作の映画)
3.6
自己満足点 70点

ダンケルク以来、久々にリアルな戦場に放り出された感覚になりました。

「驚異のワンカット」で話題のアカデミー賞のノミネート作品!
それを主人公の目線でワンカットのように見せるカメラワークのため、FPSゲーム視点のように戦争が描かれる映画です。


内容は、「007」の監督でお馴染みのサム・メンデスが第一次世界対戦時に戦場の伝令係だった祖父の話を元にして作られたそうです。
どこまでが実話かは知りませんが、伝令を受ける主人公は監督の祖父がモデルになっているのは間違いないでしょう。


さてワンカット演出ですが、実際には2カットに見せてる演出ですね。
実は途中ある出来事が起こって映像が暗転し、何時間か経過するので(笑)
ですが、全編にわたって長回しを行ってワンカットに見せるのは凄いと思います。
カットを繋げて長回しに見せる技術は「ゼロ・グラビティ」や「ROMA」のアルフォンソ・キュアロンが有名ですが、カットの繋ぎかたはキュアロンの方が上手いと思います。
彼の技術は本当にどこを繋げて長回しに見せたかわからないくらい凄まじいのですが、この映画はそれに比べて人物の配置が少しズレてたりとバレバレなところはありましたが、それでも全編にわたってそれを行った演出自体は凄いと思います。

こうした映像なので、ダンケルク以上に「コールオブデューティ」らしい演出でしたが、個人的には全然悪くないと思います。

全編長回しという条件かつ綺麗な映像を無事に撮れたのは撮影監督のロジャー・ディーキンスだからこそでしょう!
長回しの中で人物の配置等をバランス良く撮れていますし、彼が得意とする夜の光と影のコントラストも非常に美しいです。
今年度のアカデミー撮影賞は納得で、彼は獲るべくして受賞したと思います!

なので、映像と演出のみでしたら今のところ圧倒的に今年1位です!

音響も素晴らしいです!
アカデミー賞は録音賞も獲っていましたが、銃声や爆発音がリアルで本当の戦場にいるかのように錯覚されて怖かったです!



...ただそれ故の弊害なのか、根本的なストーリー自体はあんまり印象に残りませんでした(^_^;)

ストーリー自体、翌朝に攻撃を仕掛けようとする軍に攻撃中止を伝令しに行く話というシンプルなストーリーです。
歴史的な事件を題材に扱ってるわけではなく、伝令を伝えに行くだけでも命を掛けなければならないという戦争の恐ろしさを描いた作品です。
そういった意味では、戦争ではありふれた出来事でもこんな裏話があるという事に気付かされますが、それによって驚きや感動がさほど生まれませんでした。
個人的には戦争の歴史的な事件をドラマチックに映した映画の方が好きです。

ストーリーも普通であれば、主人公含めた登場人物もあまり印象に残りませんでした。

戦争なので、いつ撃たれるか解らないので登場人物に死者が出ます。
ただ、登場人物が死んでも可哀想だと思うくらいで、悲しみがそこまで沸きませんでした。

登場人物に愛着を持たせるのは非常に難しいと思います。
ただ、少しでも個性が強かったり特技があればそれだけでも印象深くなります。(例として、主人公が最初ヘタレだったけど段々と芯がしっかりして成長していく等)
1917にはそれが少なかった気がします。

なので、映像や演出、音響は素晴らしいものがありながらもストーリーや登場人物が印象に残らなかったのが惜しいです。

個人的には「ダンケルク」の方が好きでした。