さうすぽー

オッペンハイマーのさうすぽーのレビュー・感想・評価

オッペンハイマー(2023年製作の映画)
4.1
自己満足点 80点

一つの兵器の発明によって世界の全てを変えてしまった、科学者の栄光と苦悩の物語。
日本人だからこそ、観ることの意義を感じました。

"原子爆弾の父"と称されるロバート・オッペンハイマーの半生を、数々の娯楽大作を手掛けた監督クリストファー・ノーランによって製作された本作。
広島と長崎に甚大な被害を被ったきっかけを作った人物の一人だけに、去年公開ながらも日本の公開が長らく未定でした。しかし、最終的に「パラサイト 半地下の家族」や「ドライブ・マイ・カー」を配給したビターズ・エンドの配給で無事公開されることとなったとのこと。(本当に良かった!)


今作でノーランは自身初のアカデミー賞作品賞(&監督賞)を受賞しましたが、その理由が非常に理解出来ました。
確かに凄い映画です!


本作で何が一番凄かったか。
それは、オッペンハイマーという人間の視点に無理やり引き込まれる演出です!
このロバート・オッペンハイマーという人物は正直普通の人間では無いです。
冒頭での学生時代でのとある異常行動や、妻がいながらフローレンス・ピュー演じる女性を含めた女性と不倫関係になる所、所々で冷静に考えると「この人おかしくない?」と思わせる場面があります。
しかし、そんな普通じゃない人なのに、何故か感情移入してしまう時が多かったです。
だからこそ、原子爆弾の開発という狂気とも言えるプロジェクトを行ったとも言えるでしょう。

おそらく、オッペンハイマーをクローズアップで見せるカメラワークであったり、時折映し出される脳内映像(プロメテウス?)、そして演じたキリアン・マーフィーの素晴らしい演技で主人公に共感させる魔法にかけられました。

また、演じたキャストはロバート・ダウニーJrやマット・デイモン、エミリー・プラント等そうそうたるキャストが出演していますが、中でもデイル・デハーンとゲイリー・オールドマンは映画観た後に確認してようやく気が付きました。
また、アインシュタインを演じたトム・コンティは「戦場のメリークリスマス」にローレンス役ですが、アインシュタインにそっくりです!(笑)

原子爆弾の実験シーンは本当に怖いです!
本作の一番の見所と言っても過言ではないと思いますが、その威力の恐ろしさによる恐怖と、同時に迫力に興奮してしまう自分への恐怖と二重に襲われました。


ちなみに、「原爆を肯定してるんじゃないか?」という指摘がありますが、それは最後まで観れば「全く肯定していない」とはっきり理解出来ると思います。
また、広島と長崎の惨状を映してほしかったという声もありますが、自分はあえて直接映さずにオッペンハイマーがそれを観てる場面を映す事で充分に伝わってきたので全然問題無かったと思います。


ただ、それ以外の所で問題点はあると思います。
それは、音楽が多すぎる所です。
映像美やカメラワークで充分に集中出来る場面でも音楽がかかってるだけに何度か「しつこい」と感じてしまいました。

あと、この映画は殆どが会話劇です。
後半になるにつれて非常に面白くなりましたが、序盤から面白い会話劇が繰り広げてたかといえば否で、正直退屈に感じた場面もありました。


とは言え、原子爆弾を作った人間の視点から原爆というものを考えさせられたし、特にラストの台詞は今起きてる世界情勢にも通じるメッセージでもあったと思っています。

日本人だからこそ辛い場面もありましたが、だからと言って「観てはいけない」映画では決して無いし観るべき映画と思っています。

総じて、観て良かったです!