Longsleeper

マリッジ・ストーリーのLongsleeperのレビュー・感想・評価

マリッジ・ストーリー(2019年製作の映画)
4.0
人生のステージや状況について絞り込み細かく描写し切っているため、共感しやすさはやや低め。
登場人物を具体的に描けば描くほど観ている人と遠くなる、というジレンマを呑み込んで描いた話だと思った。
恋人だったら「やっぱり合わなかった!」で別れて終わりだけど、一つの家族を作った後に別れるとなるとこんなに痛みを伴うのか、というのが詳らかにされる。
一度は愛し合った人たちが罵り合い殴り合いになる。
劇中でノラがstreet fightという言葉を使ったのがまさに的を射ている。(関係ないけど『リーガルハイ』でも「ルール無用のストリートファイト」と形容されてた、国境越えてるなと思う)
さらに、子どもがいなければ罵り合いながらも財産分けて終わりかもしれないけど、失うわけにいかないヘンリーとの絆ってもんがある。
行儀良く、お金をかけずに負けることは簡単だけど、それでは子どもに会えなくなってしまう。
夫婦の歴史、家族の歴史が長ければ長いほど、「今までは何だったの」「何で自分たちで築いたものを全力で否定して壊しているの」という虚無感や悲しさがあるんじゃないか。
離婚経験者の人が見てめちゃくちゃ辛かったというレビューも納得だと思った。
多分長く一緒に暮らし続けるためには、日常どこかで生まれざるを得ない不満を、お互いこまめに発散しあったり、一緒に解決したりする必要がある。
でもチャーリーはそういう人間関係のメンテの仕方を自分の生まれた家族から教わってない。
冷たくて緊張感溢れる家に育つと、自分の内面に閉じこもってひたすら防御体制を取るしかないのはわかる、わかるよ。。。
話し合いや交渉の仕方がわからないから、主張し続けて戦って勝つしかないと思うのも。
現在の姿からその人の過去を読み取らせるという映像表現の基本に忠実だった。見てて心が痛い。
一方でチャーリーが指摘したニコールの「意見もないのに声を上げたがる 文句を言いたいだけだ」というのはあまりピンと来なかった。
ニコールの母親には当てはまると思う。
辛い家庭環境から派生した内省しまくる力を仕事にも役立ててるチャーリーからしたら、ニコールは意見がないと映ってしまうのかもしれない。
ただチャーリーが折れないから引き下がっただけとも見えるんだよな。。。
行き着くところが、幼少期から培ったコミュニケーションの方法の違いにあるからこそ、「ここでこうしていれば」という解がなくてやり切れなかった。
過去のLAの仕事を引き受けていれば良かったといえばそうだけど、二人が合意する光景がどうしても思い描けない。
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