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ホモ・サピエンスの涙のgcpのレビュー・感想・評価

ホモ・サピエンスの涙(2019年製作の映画)
4.0
女を見た。その人は電車を乗り過ごしていた。3連休初日から昨日終わらなかった仕事(緊急事態宣言のせい)に振り回され(自分のせい)駅から全力疾走して上映開始5分後に着席した。問題なかった。観る前から始まっていたようなものだ。
忘れもしない2014年の冬。ダリ・マグリットや現代アートにしか興味がなかった当時、無料で美術館に入れたので暇つぶしに印象派の展示にもいき始めていた頃。国立新美術館シャガールの「パリの上で」の前で動けなくなってしまった。絵が光り輝いていて空間全体を覆っているような感覚、そんな体験は初めてだった。それからシャガールを観に他の美術館にも行ったりして、部屋にも飾ったり、とにかく今でも一番好きな画家。だから映画のフライヤーを見かけた時から行くと決めていた。
丁度昨日、毎日100日分禅の言葉を写経できる本をプレゼントしてもらった。幼少期、唯一続いた習い事は書道で高校の授業で写経にハマったわたしは、未だに人一倍慌ただしい性格だけれど精神を清めるのは写経が一番性に合っていると思う。昨日いただいた本を読んだら、書くときは無心で、書き終わってから言葉を噛みしめる、と書いてあったのだけれど、この映画がまさにそうだった。只々観た。観終わって、どんどん開ていく。しばらく噛みしめられそうな良い映画だった。すぐ感じたのは「わたしは−1000点くらいの人間だって認識していたはずなのに、いつのまにか100点満点を目指そうとしていた、しかも他人にも求めていた!」という意識。過去も未来も現在も我々はホモ・サピエンス。哀しいホモ・サピエンス。愛を求め愛を与えられるホモ・サピエンス。世界は脆い。死は常に目の前にあり、破滅は一瞬で起こる。だからこそ、生という日常や創造が美しい!
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