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HOKUSAIのいののレビュー・感想・評価

HOKUSAI(2020年製作の映画)
3.3
前半はなかなか良かった。でも、なんと申しましょうか、長くて飽きちゃった。尺が長くても長いとは感じない映画もあるのだから、これは尺の問題というよりですね・・・(以下、略)。脚本も編集も難ありだったのかも。(私が想像するところによると)監督がどうしても描きたかった画がところどころにあり、そこに力が入りすぎて、なんというか、バランスも悪い。結局のところ、絵とか小説とか、そういった文化に対する統制(弾圧)への抗議(警鐘)をあらわしたかったのかもしれない。もちろんそれだけじゃないんだろうけど。

晩年の北斎の描く〝波の渦〟は、彌生ちゃんの描く〝水玉〟に相当するのかもしれないと思った。歴史モノは、もちろん史実とは異なる部分も多いのだろうし、なにもかも史実通りに描く必要もモチロンないし、史実から大胆に跳躍したって構わないんだけどさ。初っ端に、蔦屋重三郎が営む耕書堂へのガサ入れがあって、浮世絵や書物(「婦女人相十品」や『仕懸文庫』も含まれていた)などが店の外で燃やされるんだけど、こんなことしたら火事になっちゃうじゃん!江戸は火事がただでさえ多いんだからさすがに店先で燃やしたりしないっしょ!とツッコミか質問かをしたくなった。柳亭種彦のさいごも私の理解とは異なるんだけど、それはわたしの知識不足かもしれないからまあいいとしても、あの絵は本当に柳亭種彦がらみの絵なんですか?→このことについてはいづれ学ぶとしよう。


青年期を演じた柳楽優弥と、老年期を演じた田中泯とはちゃんと繋がっていて、田中泯の瞳のなかに柳楽優弥の瞳が重なるような瞬間が度々あった。お二人の熱演には脱帽する。


登場人物の女性の描き方はことごとく残念。歌麿の絵の中にしか女性はいなかった、と感じたのでありんす。小布施の話は勉強になり申した。予告篇の勝利。




〈自分用のメモ〉
蔦屋重三郎1750-1797
喜多川歌麿1753-1806
葛飾北斎1760-1849
東洲斎写楽生没年不詳
(1763-1820説が有力)
曲亭馬琴1767-1848
柳亭種彦1783-1842
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