このレビューはネタバレを含みます
うーんこれはとても難しい…
反政府組織が拠点としていたアレッポの惨状は筆舌に尽くしがたく、そこで生きる人々の生活は生活ではない。
主人公がアレッポで伴侶を見つけ子供を産み育て、トルコに逃げる選択を選ばず子供と一緒に生きるか死ぬかのプライベートなドキュメンタリーと思わしき作品ながら、反体制派のプロパカンダとも取れる内容。
アサド政権が悪で、反体制派が善というのはあまりにも単純な構図。
でもこれだけを見るとそう思えてしまうのが何とも。
空爆され、ロシアに悪態をつきながら「誰もこの惨状を気にかけない」というセリフには、いやいやどこもかしこもあなたの国のことで大忙しですよと言いたくもなる。
支援物資も乏しい場所で、ドローンで撮影できたり難民が通りにくい英国へ移住できたのはそういうことなのかと推察は出来る。
『ホワイトヘルメット』もそうだけど、背後に見え隠れするイギリスなどのヨーロッパやアメリカの国々。
彼らが第一次大戦後、中東の国境線を勝手に引いて、資源をあさって支配してきたツケがずーっと終わらない。
シリアの混乱は地政学的に逃れられない運命なのか、アサド政権は生かさず殺さず。
シリアの当人たちを差し置いて、宣伝したり金儲けしたり。この作品もそう。
イスラム教宗派の違い、反体制組織の多さ、過激派組織の分裂や統合。
とにかく殺し合いだらけ。
自分たちの使命感に、子供をダシにしてるように映るからそこがすごく不憫だなと感じました。