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街の上でのstのレビュー・感想・評価

街の上で(2019年製作の映画)
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今泉作品的な「人」の情動のみならず、下北沢という「街」の場所性へも言及する。"トリウッド"や"本多劇場"・"THREE"といった固有名詞から、カフェから眺める建設現場・古書店内に横から鋭く差し込む光・徒歩と自転車で完結する移動といった表現細部に至るまで。全てタクシーで移動する『愛がなんだ』とは違い、等身大で身近な「街」がそこにはある。男女の思いは「街」の上で錯綜し、また、邂逅する。
2人で広げる白い大きな布。一つ屋根の下、あたかも大きなレフ板かのように2人の男女の顔を明るく照らす。何度も注がれるお茶が、時間の経過とともに無くなっていく。隣同士の部屋で朝を迎える2人は「友達」か、「友人」か。
意味のないことの中にある意味。初めての演技は映画には使われることはなかったし、役作りのために太ったことも無為に終わる。ラジカセのないカセットテープも、手をつけられることなく冷蔵庫に眠るケーキも、青いTシャツと白のワークパンツも。「楽しい」時間と「楽しくない」時間。下北沢という「街」の上には、それらが溶け合うように、今も流れ続けている。
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