TERUTERU

街の上でのTERUTERUのレビュー・感想・評価

街の上で(2019年製作の映画)
4.6

[ 街の上で ]


「距離感」
彼と彼女が上手くいってない時の距離、
店員とお客さんの距離、
亡くなってしまった人とその失った人への距離
知り合ったばかりの人との私の距離
同じ街の上で暮らす人々と私との距離

遠いようで短い距離感、その距離が長ければ良い短ければ悪い意味なんてない。
目の前に存在する距離感、その場その時生じるこの距離感が人の姿なのだろう。
他愛もなく、切なく、でも愛おしい、無駄なんか一つもない、純粋な人の感情なのだと。



 ずっと見たかった今泉監督の『街の上で』やっと見れました!
個人的にはここ最近観た映画の中でもの凄く良い映画で!逆にお勧めしたくない程自分のお気に入りの映画です。。。
 自分の年代が同じくらいだから共感しやすいというのもあるけれど、ここまで日常をよく観察していると言わんばかりの出来栄えで親しみやすい映画と感じています。

 中でも自分が好んでいるのは人との距離感の映し方。というよりも会話の最中の距離と言ってもいいかな、だいたい映画の会話って話している人がドアップで映し出されていたり、夕日を背景にこの景色をお楽しみくださいと言わんばかりの会話のシーンがあったりのパターン。けどこの映画ではだいたい2人、多くて3人での会話シーンばかりで風景に着目しているわけでもなく、会話している人の頭から体全体まで撮るフルショット撮影が多い。そしてカメラは固定。斬新すぎる。なにかアクションがなければ興味ない人が見たら絶対寝てしまうぞ!とも思うけど、自分はこれだけでも素晴らしいと思う。
 面白いが成り立つ理由をもう1つ付け加えるとシュチュエーションだ。誰にでもありそうでないような日常をテーマに物語が書かれている分、その会話は普段何気なさ過ぎて当然のように振る舞っていた自分たちの姿かも知れない。それも幾人もの人たちの会話の中で、どんな関係のなかで、その会話中の仕草、話し方が一層に観る者に対して惹かれる。会話相手は後に友人になるのか、はたまた自分の彼女になるのか、嫌いになって街の知り合いなるのか連想が広がっていく。共感できるようで、もしそんなことが起きたらどんな会話を自分はしているだろうと想像する。個人的な感想だからもちろん他にも良い所はあるよ!でもこの光景のシーンは自分には赤の他人の会話の一部始終を観ているようで新鮮な気持ちだ。。。

 こんな下北沢の街の上でちょっとした出来事から最後に全て繋げてくる辺りはお見事すぎて急すぎて感動して、いつの間に涙腺に込み上げてくる感情がこぼれ落ちるまでなかなか熱が冷めない。ふと思い出すようなあの時の恋心を抱いていた人へお別れをしたのに「待って」の言葉が今更になって浮かび上がってくる。後悔していた自分がもしあの時違う選択をしていたら、この映画の結末の言葉が聞けると思う人もいたりするのではないだろうか?まだ手遅れじゃない人は追いかけなよ。ただどう答えたらいいかわからなくてもいい、渾身を込めた一言で充分あなたの気持ちが伝わるから。

 パンフレットが今回は見ごたえあり!ロケーションマップがあって巡礼しやすくマーキングしてあるよ。映画のその後を描いた短い縦漫画に主題歌の「街の人」と「チーズケーキの唄」の歌詞が載っている。沢山のコメントにも映画を観た後の余韻が止まらない。
 『花束みたいな恋をした』も凄く感動良作映画だったけど、自分はこっちのほうが好きだったりして。
『街の上で』が人気になっていくからこの一言は成り立たないかもしれないけど、この感想が有名になる訳でなく誰も見る事は無いけど、確かここに存在しているレビューを残していくね。👋


2021/№017
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