下北沢は知らない。でも映画を観て街が魅力的であり、それがそこでの生活を魅力的にし、人を魅力的にすることがわかる映画。
映画全体を通じてのゆっくり感、それぞれの人が街にある映画、古本屋Bar、舞台、古着屋とともに暮らしていて、それを無理せず、自然体で楽しんでいることがわかる。
映画は青という古着屋の店員の恋と生活を中心に描かれる。青はどこにでもいる青年、でも素直でかわいい。すれてない。人生で初めての彼女を他の男にとられるけど、雪をあきらめきれない。そんな彼の生活の中で、古本屋に勤める冬子との接点、彼女の不倫の恋愛癖、大学映画に出ないかという町子からの誘い、冬子に手伝ってもらって演技の訓練をしたものの、出演したところがボツになって使ってもらえなかったこと、そこで知り合った朝ドラ俳優の間宮が実は雪の浮気相手だったこと。映画で知り合った大阪弁を話すイハと友達になり、会ったその日に彼女の家に泊まり、お互いの恋バナをしてもりあがったこと。そしたら次の朝にイハの元カレが家に来て出会ってしまったこと。それらが伏線になり、最後に回収される。映画としてもとても面白い。
雪、町子、イハ、冬子という4人の女性が個性際立ち、とても魅力的である。気に入ったシーンは、イハと青が夜延々と麦茶をのみながら恋バナをするところ、いいシーンでこちらまで麦茶の香がした。
そして最後のみんなが一同に出会ってしまって回収されるシーン、思わず笑ってしまう。面白い。
後、成田凌さん演ずる俳優の間宮が、俳優も俳優である前に一人の人間だから一人の女性から愛されたいというセリフがあり、それが心に残った。なんだか俳優という職業の難しさとそれを職業にする悲哀を感じるシーンだった。
エキサイティングなことは何も起こらないが、街と人が溶け合い、ほっこりした気持ちになる映画です。何気ない日常や、市井の人の何気ない言葉や感情にフォーカスして映画を撮り続ける今泉監督、いいと思います
