このレビューはネタバレを含みます
いや~面白い。問題提起とかさておいて、劇映画版『新聞記者』よりこっちの方が断然に面白い!森達也最高だわ。そして望月さんという人物が面白くて魅力的過ぎる。単純に美人だし、あのサバサバした声とかキャラとか食べ方とか全部が好感持てる。
ただのサラリーマンのはずなのに森達也作品史上でも被写体としてかなり輝いていた。
とにかく熱中するとフットワークが軽くなり周りが目に入らなくなるという望月記者。
そんな彼女に対して森監督が理解している部分と振り回されている点がそのまま映像に現れているのも『i 新聞記者ドキュメント』の面白い部分。
方向音痴でもある望月記者は冒頭から官邸内や都内を走り回り、部下とのハンズフリーの電話で大声でまくし立てる。また取材中にも辺野古の埋め立て問題で沖縄に出向いた際に、沖縄防衛局の人間に質問への回答を求めて食い下がるところもものすごい形相だ。
望月記者の意見はしっかり取り上げ、思想的には同意をしていても、彼女のちょっと極端な部分に戸惑っているのが伝わって来るし、それを少し笑えるように編集している。
決して意地悪な目線ではないのだが、バイタリティが凄すぎるがゆえにそのまま映ってしまった変な部分をしっかり入れているのが面白さや取材対象に寄り添いすぎないクールな視点に繋がっている。
政権に批判的な記者に密着しているからといって、その思想だけにフィーチャーするわけでもなく、彼女を賛美しているわけでもない目線の映画なので、望月記者に対し賛同している方でも批判的な方でもどちらでも楽しめる。
ちなみに自分は望月記者はやりすぎな部分も多くて極端なところはどうかと思うけど、思想的には割と賛同する部分が多い立場です。伊藤詩織さんの件も許せないが、とにかく菅官房長官とあの質問妨害野郎はマジで許さない。とか言いつつ自分が官房長官だったら望月記者の事大嫌いになるだろうなとも想像できた笑。しかしあの組織のロボット野郎は死ぬ間際に「俺の人生ずっと記者の妨害してただけかよ」と呆然と後悔してほしい。
レイプ野郎山口は取材受けた時の態度がそんなに悪くなかったのですこし印象よくなってしまった自分が悔しい。
その他、いろんな人が出てくるけど、意図してか意図せずか、なんか笑えてしまう場面が多かった。特に籠池夫妻。奥さんはいったいどうしたんだあのテンション(笑)。籠池さんの真正保守理論は相変わらず胡散臭かったけど自民党よりはマシ。
そして沖縄問題やら何やらいろんな場所に場面は飛んで、最終的に選挙応援演説している官房長官と望月記者の対峙場面になるところで、今までの森映画ではありえなかった突飛な演出が飛び出して爆笑。官邸内部が撮れないことのフラストレーションが溜まったのかな。あの不利な状況も面白さに変えるのはさすがだと思います。
しかし最後のナチス占領解放後のフランスの写真を持ち出した総括ナレーションはあんまり乗れなかった。それは極端なのではないか。
中盤にでてきた「仮に左翼政権ができても自分たちの仕事は変わらない」という望月記者の言葉、僕は信じてます。そして記者クラブなんて解散してメディアの皆さんはもっと自立性を、“i”としての自覚を持って職務に当たって欲しい。そして望月記者は今は平気だろうけど過労死しないように気をつけて。
メディアの仕事は思想に関係なく重要ですよ。