亘

アンジェラの亘のレビュー・感想・評価

アンジェラ(2005年製作の映画)
4.2
アンドレはチビで頭悪くてイケてない、冴えない男。借金返済が迫り失望した彼がセーヌ川に身を投げようとしたその時、謎の長身美女アンジェラが現れる。彼女との出会いからアンドレの生活は好転し始める。

初めに言ってしまうとこの作品の脚本には穴があり突っ込みどころがある。アンジェラが始末した相手の行方がどうなったか全く描かれないし結末も運命に逆らってるように感じる。それでもこの作品に惹かれた理由はその強いメッセージ性とおしゃれな画面、そして脚本の不完全さが2人の不器用さに重なったからだと思う。

この作品のテーマは"自己肯定"。アンジェラはアンドレとは正反対に見えるけど実はアンドレ自身を投影している。初めは自分に自信のなかったアンドレがそんなアンジェラを次第に受け入れ愛する様子はまさに自己を受け入れ愛するということ。鏡での特訓シーンは特に印象的だった。

それから白黒の画面とおしゃれな画面構成が2人のぎこちない関係とかアンジェラのミステリアスさ、パリの美しさを強調している。特に白黒であることで2人のやり取りに集中できたと思う。

そしてなんといっても不完全な脚本でも惹かれる一番の理由は2人の不器用さがマッチしているからだと思う。2人は愛し合うけどどこかぎこちなく距離がある。なんか言葉足らずな感じもする。それはアンドレが不器用なのもあるけど、アンジェラも不器用だから。長身で美人で聡明なアンジェラは完全無欠に見えるし、アンドレに対しても「愛されたことがないければ自分を愛せない」と話す。でも実は彼女は"過去のない女"で自分の存在が分かってないし彼女自身愛されたことがない。ラストはアンジェラが自分の運命に背いたようにも見えて行く末が不安でもあるけど、2人が遂に愛を見つけて自分自身を受け入れたように見えた。

印象に残ったシーン:2人の出会いのシーン。アンジェラがカフェで自分の正体を明かすシーン。鏡で特訓をするシーン。アンドレがアンジェラを引き留めようとするシーン。
印象に残ったセリフ:「人に愛されないと自分を愛するのは難しい」、「OK」;アンジェラの言い方が耳に残った。
亘