空海花

WAVES/ウェイブスの空海花のレビュー・感想・評価

WAVES/ウェイブス(2019年製作の映画)
4.2
今作は、宣伝文句がすごすぎて、逆にハードルを下げてました。
初めて聞く“プレイリスト・ムービー”を体験したく劇場へ。
残念ながら曲はそこまでわからなかったです。


ストーリーは特に目新しいものではないとはいえ、色々な要素が織り交ぜられ、上手くまとまっていると思う。
兄妹のW主演。厳格な父親の家庭。
兄は成績優秀で高校のレスリング選手、恋人も居て、父親との関係に多少の不満を感じつつも
順風満帆と思える日々を過ごしている。
だがある挫折から、転がり落ちるように状況は最悪なものになっていく。
高校生には確かにこの挫折はツラいよね。
だからといって…なんだけれども。

無粋ながら少し教育というものを考えると
厳格さの中にも愛を感じる父親が悪いとも思えない。
ただ黒人だからこそ完璧にこなしていかなければならないというのは、見えないプレッシャーとして心に刻まれていく。
いざという時にもジッと耐えて立ち上がれるような強さを育んでほしい、と思っても
言葉だけなら簡単に言えても、答えがあるものでもない。
どんよりと重いものがのしかかる。

この父の娘であり、兄の妹の物語は救済のパートだ。
家族で1番若い女の子が、家族を癒し、救っていく。
“大丈夫?” “いいのよ”
気遣いと赦し
優しさと愛に触れ、
それはきっと彼女自身の中にあったもの。
気付き成長していくこの若い包容力がとても輝いていた。
ルーカス・ヘッジズと共に天使のよう。
この2人のキャスティング最高。

絶望に飲み込むような激しさと
全てを包み込むような穏やかさと
多種多様な海のうねりに形容できる物語が
WAVES という言葉に集約されるのは
愛と理解が繋がれてゆき
なんとも言えない快感が得られる。

映画の音楽はとても大事。
人はそれぞれ自分のプレイリストを持っているものだから、このアイデアは面白いと思った。
映像の色彩はヒラヒラしていて、観ているうちに何かの形みたいで
それを感じようといつの間にかジーッと見つめていて、色々と考えてしまう感覚が心地良かった。
音楽と映像も含めて調和していく
しっかりとした新しい物語だった。

ほとんどの曲を、歌詞の意味もわかっている状態で観たらどうだったろう?
すごいシンクロ感がありそう。

この監督、まだまだ傑作を撮りそうで
今後も楽しみ。


2020劇場鑑賞No.78/109


それにしても海外の医療用麻薬の依存の仕方が怖ろしい。
銃社会並みに問題では😱

映像は綺麗なんだけれども
車の360°カメラと画角の変化はどうかな?
ちょっと浮いて見えてしまった。


ネタバレコメント有り
空海花

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