むっしゅたいやき

ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONEのむっしゅたいやきのレビュー・感想・評価

4.3
ミッション・インポッシブル─。
誰しも其のタイトルを聞くだけで、あのテーマソングが脳内に鳴り響き、周囲を伺う目付きが怪しくなる作品である。
当時純真無垢であった学生時代の私を、映画鑑賞の沼へと誘い、今や絶滅したLDプレイヤーを買わしめた作品でもある。
今回も身体を張ったスタントを披露したトム、そして舞台となったイタリアへのリスペクトを込め、私も朝からジムで汗を流し、昼食にはカプレーゼと生ハムと桃のプレート、ジェノベーゼソースのカッペリーニをワインで流し込み、イキって鑑賞に臨んだ。
…今思えば、ヴェネツィアをリスペクトして、パスタはイカ墨にすべきであったが。

扨、本作である。
既に先行のレビュアー様により語られ尽くされているが、私が今回感じ入った点は下記三点となる。

一、映像の美しさの追求
イーサンの初登場シーンとなるアムステルダムの廃墟となったビル。
其の一室に射す夕陽と陰を利用し、静寂を感じさせる演出。
人は一面の闇に置かれるよりも、点として光を混じえた方がより闇を感じられる。
本シーンはこの特性を善く取り入れて演出されており、今迄のシリーズには無かった特徴であろうかと思われる。
また、この特徴あるショットは、後半ヴェネツィアの夜のゴンドラ(ランタンと群青色の水面、舟陰)のシーンや、数多の燈が灯るパラツィオでの逃走劇のシーンにも見られる。

二、スピード感の演出
このシリーズに通底する特徴であるスピード感、これを演出するコンティニュイティ。
今更挙げる迄も無いが、街中のカーチェイスから暴走する機関車の屋上は元より、間延びし易い交渉時や閑話時まで小さなカットを繋いで構成されており、クロスカットやジャンプカット、ディゾルブを駆使する事でよりスピード感が演出されている。

三、ドラマツルギー
アクション物によく有る、『主人公側の主要人物は死なない』と云う観念の“肯定”と打破。
ネタバレになるので控える。

まあ、小手先の知識を振り翳すよりも、こう云った作品は「面白い」か「面白くない」かで語るべきであろう。
取り敢えず私は鑑賞後、陰に身を潜める様にして帰宅した。
現在は、中古のチンクエチェントを購入しようか真剣に考慮中だ。
其のレベルで「面白い」、然う御承知置き願いたい。
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