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コリーニ事件のmendeのレビュー・感想・評価

コリーニ事件(2019年製作の映画)
3.9
コリーニ(フランコ・ネロ)というイタリア人の初老の男性が、ホテルのスイートで大会社の社長、マイヤーを殺すところからスタート。頭を中心に3発も撃ち込み、顔を踏みつけて頭蓋骨を粉砕するという残酷さ。

主人公はコリーニの弁護を担当することになった新人弁護士、ライネン(エリアス・ムバレク)。実は被害者のマイヤーは幼少の頃からの恩人でもあった。

コリーニが黙秘しているので、ライネンは弁護に苦労する。でも父と絶交しているライネンに「父親に会っておけ」とぽつんと言うところなど、コリーニには悪人とは思えない面もある。
調査が進むにつれ、トルコ系のライネンに親切だったマイヤーの別の顔がだんだん明らかになる。
語り口が少しこなれていない感じはあるが、明らかになる真実、コリーニの人生、黙秘の理由が重く、映画にも重みを与えている。

■以下ネタバレ■


マイヤーは元ナチスのSSで、まだ幼かったコリーニの目の前で一般人の父を射殺していた。父は犯罪者に間違われたわけでもなく、なんの罪もないのはわかっていたのにただ見せしめのために殺されている。
明らかに戦争犯罪。
コリーニはこうやって暴力に訴える前に、法にのっとってマイヤーを訴えたのにドイツの裁判所に却下されていた。
もともとあった秩序違反法をコリーニが訴える直前に改正(改悪)されており、結果的に元ナチスの罪を軽くしていた。そのせいでマイヤーを罪に問えなかった。
ほんと、法律を変えようとする人たちには気をつけないといけません。

被害者側の代理人である教授はこの法改正に携わっていた。代理人はマイヤーの犯罪について「おぞましいことが起こるのは悲しいことだが、こうしたことは戦争ではよくあることなんです。実際我が国以外でも行われていたことです」なんて言う。
どの国でも戦争犯罪を逃れようとする人たちは同じようなことを言うのだという学びがある。慰安婦問題について、南京事件について、こんなセリフを聞いたことがある。
元ナチスが犯罪を問われずに社会に溶け込んでいた人が大勢いるのも知らなかった。日本では元戦犯が首相になったりしているので、どうこう言える立場ではないけれど……。
現在のウクライナで同じようなことがどうか起こりませんように。
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