Dick

デンジャー・クロース 極限着弾のDickのレビュー・感想・評価

3.0
❶相性:やや不良。

➋本作のような作品を、きちんとレビューすることは、極めて悩ましく困難である。

➌「Based on a true story.」
本作は、クレジットで示された上記の文章の通り、ベトナム戦争中の1966年、オーストラリア軍とニュージーランド軍108人が南ベトナムの農園地帯ロングタンで南ベトナム解放民族戦線(ベトコン)軍約2,000人を相手に戦った「ロングタンの戦い」の史実を基に、オーストラリア軍の立場から描いた戦争映画である。

❹エンドクレジットの最後に、勇敢に戦って戦死した、オーストラリアとニュージーランドの兵士18名の実名と年齢が示されている。19歳から22歳の若者ばかりである。一方、戦死したベトナム兵は、その何倍もの数に上る。

(注1)ベトナム戦争による人的損害は,兵士の死者がアメリカ 5万8200人(カナダ人 100を含む),南ベトナム 20万~25万人,北ベトナムと解放戦線約 110万人。南北ベトナムで約 200万人の民間人が死亡。南ベトナム側で参戦した外国軍の死者は大韓民国(韓国)4000人以上,オーストラリア 500人以上,タイ約 350人,ニュージーランド約 30人(Wikipedia)。

(注2)現在世界的に猛威を振るっている新型コロナウィルスの死者は、6/23現在、トップのアメリカだけでも12.2万人(上記ベトナムでのアメリカ兵の死者の2倍を超える)、全世界では47.2万人にもなる。恐ろしい疫病である。

❺「ベトナム戦争」は、歴史的評価の定まった現在の観点では、「アメリカの侵略戦争」であり、侵略されたベトナムにとっては「自由を守る為の正義の戦い」である。

❻本作で描かれた「勇敢なオーストラリア兵」は、ベトナム側からは、「自由を踏みにじった侵略者」なのである。そして、世界の歴史的評価は、ベトナム側を被害者として支持している。

❼誤解のないよう断っておくが、戦ったオーストラリア兵を非難しているのではない。オーストラリア兵もまた被害者なのである。彼等の生命に関する重要事項が、彼等が関わることが出来ない、別の人間によって決定される。その決定に彼等は異議を唱えることが許されない。そんな理不尽な世界が戦争なのである。

❽まとめ:
上記のことを考えると、映画として素直に楽しめない。
これがフィクションなら、事情は違う。エンタメとして楽しめたと思う。

❾外部評価
①Rotten Tomatoes:35件のレビューで、批評家支持率は71%、加重平均値は6.2/10。
②IMDb:7,154件のレビューで加重平均値は6.8/10。
③KINENOTE:14人72点/100点
④Filmarks:103人3.6/5.0
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