ノラネコの呑んで観るシネマ

わたしの叔父さんのノラネコの呑んで観るシネマのレビュー・感想・評価

わたしの叔父さん(2019年製作の映画)
4.5
デンマーク、風光明媚なユトランドの農場に、27歳のクリスが脚の悪い叔父さんと暮らしている。
子供の頃両親を亡くした彼女を、叔父さんが一人で育ててくれたのだ。
朝起きて叔父さんの介助をし、一緒に牛の世話をして料理を作り、ボードゲームに興じるのがルーティン。
たまの買い物以外、全く変わりばえしない毎日を送っていても、かつて諦めた獣医師になる夢には未練があるし、近所に住んでいる同業のイケメンにも言い寄られていて心が動く。
叔父さんも、いつかはやって来る姪っ子の旅立ちを意識して、突然リハビリに励みだす。
原題の「uncle」に、所有格の「わたしの」を付けた邦題が秀逸。
クリスは、とにかく大好きな叔父さんが心配で仕方ないので、一時も離れられない。
彼女の生きがいは叔父さんで、まさに「わたしの」なんだな。
叔父さんも、彼女の人生を縛ってはいけないと思いつつ、デートにもついてきちゃうし、日常をあえて変える勇気はない。
一見して共依存関係にある二人は、人生に波乱が起きるのを望まない。
物語の醍醐味は、主人公が自分を変化させてゆくことにあるが、本作のクリスは真逆なのだ。
それでは彼女の人生は不幸なのか?といえば、そうも言い切れない。
人生という物語の、多面的な面白さが新鮮。
ブログ記事:
http://noraneko22.blog29.fc2.com/blog-entry-1402.html