虐待の疑いをかけられ一方的に娘を施設に入所させられた男。娘が帰ってきてもなお、どこかで掛け違ってしまったようになにもかもがうまくいかない。日々の苛立ちが娘の方へと向けそうになる男を、87分間息が詰まるような気持ちで見ていた。
娘を返してもらうために必要な仕事探しもせず、高知に住む母親に送金を頼み込んで風俗に行ったりするようなスケベ心旺盛なダメ人間だからこうなってしまったのかとも思う。でもすべての始まりは虐待の疑惑をかけられたこと、それにつきる。
子どものぎゃん泣きを心配した近所の通報で児童相談所がきた、というような話は私の友人も経験している。虐待による死亡事件が絶えない今、未然に防ぐためにはちょっとしたことでも通報したほうがいいということは重々承知しているけれど、身に覚えのない子どもの虐待を疑われたらそれはもうショックしかない。
子どもを守るのは当たり前。子どもが傷つくようなことは絶対に絶対にあってはならない。
そして、子どもを守るという大義のために大人が理不尽に傷つけられていいというものでもない。
すべての人が正しく救われる社会であってほしい。
