亘

ラ・ジュテの亘のレビュー・感想・評価

ラ・ジュテ(1962年製作の映画)
4.3
【行間を読むSF】
第三次世界大戦後のパリ。人々は地下で暮らし戦勝者は敗者を実験台として利用していた。ある日一人の青年が実験台として過去で任務を遂行する。同時に彼は過去で忘れられない女性と出会う。

上映時間27分、白黒の写真とナレーションだけで綴る異色の作品。コマ撮りのよう0.数秒後の写真をつなげるわけではなく、いきなり次のシーンの写真を見せられるからこそそれぞれのシーンの間をイメージする。まさに行間を読む作品なのだ。そして色とかセリフがないことが、シーンと行間に集中することを助けている。

パリは第三次世界大戦によって放射能で汚染され人々は地下で暮らすことを余儀なくされた。そして地下では戦勝者が敗者を実験台として、未来から燃料を調達しようとしていた。しかし多くの人々は体を現在に置いたまま意識だけ過去に行く段階で死んだり錯乱を起こしたりしまう。そんな中ある青年は持ち前の想像力のおかげで過去に行っても問題を起こさず、ついで未来から燃料を調達することに成功するのだ。

しかし彼には問題があった。彼は過去に囚われているのだ。彼はなぜか子供の頃見た空港の送迎台で男が死ぬシーンに恐怖を感じ、そのシーンが頭の中で繰り返される。さらその送迎台にいた美しい女性を忘れられずにいる。そして彼は、実験台として過去に行くようになってその女性と何度かデートする。実験の最中だけという限られた時間、しかも幻想の中だけではあるけれど彼はその時間を楽しみにしているよう。逆に言えば現実が厳しいからこそ過去に逃げ込みたかったのだろう。

彼は幻想の過去を楽しんでいたわけだけど、未来から燃料を調達する任務を遂行すると彼は用なしになる。そこで彼は選択肢を与えられる: 未来で出会った未来人たちと一緒に未来に逃げるか、実験で過去の戻りたいシーンに戻るか。前者なを選べば彼は地下世界から逃げ出し助かるだろうけど、彼は後者を選ぶ。彼は空港の送迎台の謎を解明し、さらに再びあの女性に会いたいのだ。しかしそこからの展開は伏線回収ではあるけれど、切ない。彼は過去に囚われすぎたのだろう。

印象に残ったシーン:女性がまばたきをするシーン。実験後に勝者がにらんでくるシーン。空港の送迎台のシーン。

余談
・今作はテリー・ギリアム監督の「12モンキーズ」の元になりました。
・題名の「ラ・ジュテ(La jetée)」は空港の送迎台の意味です。
亘