keith中村

スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホームのkeith中村のレビュー・感想・評価

5.0
 こんな映画、よく作れたなあ。もう感動しまくりの大満足!
 
 私はM-1グランプリ2019の「ぺこぱ」の漫才を見て、泣いてしまった人間なんです。
 漫才って、ボケにツッコむことで成立する芸じゃないですか。言い換えると、人の発言を否定することで笑いを取る。
 これが大原則で、変えようがないはずのもの。でも、「ぺこぱ」はその「当たり前」に風穴を開けてた。しかも、とびっきりの「優しさ」でもって。
 
 私の心に決定的に足りないのは、その「優しさ」。
 物語が提示する世界観の中で、「これは、まあ、こういうのが当たり前なんで」と描かれることに「乗って」しまって、それを優しく客観視できない人間なんです。
 レビューで何度か書いてるけど、「雨に唄えば」(私の生涯ベストワン映画なんだけれどね)のリナ・ラモントに「ざまあっ!」としか思えなかった人間。ある人から、「でも、リナも可哀想だよね」って言われて、文字通り頭を殴られたような感覚を若い頃に味わったのです。
 「そこに心を寄せることもできるんだ」って。
 だから、「ぺこぱ」の漫才に泣いたのも同じ理由。
 「この人たち(シュウペイさんとと松陰寺太勇さんですね)は、俺が逆立ちしたって不可能な視点で世界を見てる!」
 その驚きと、自分の欠落を気づかせてくれたことに涙したのです。
 
 でもって、本作もまったく同じ感覚で観てました。
 「ヒーローがヴィランをやっつけるのが映画でしょ?」普通は、そうとしか考えない。作り手も観客も。
 こんなヒーローもの、ほかにある?! なんちゅう優しい映画なんだよ。
 
 そんでもって、映画の構造があれでしょ?
 まあ、「スパイダーバース」でやってたのと同じなんだけれど、本作はあっちと違って実写映画であることを最大限に活用してる。
 予告を見た時に、ドック・オックとかグリーン・ゴブリンのデザインが過去作とそっくりだなぁとは思ってたんですよ。
 そしたら、まさかのデフォーさん、モリーナさん、フォックスさんたちの登場でしょ?
 こんなのガン上がりですよ!
 
 「でも、まさか、前の2シリーズのピーターはさすがに出ないよな~」
 そう思ってたら、出てくるじゃん! トビーくんとアンドリューくんが!
 これ、仮面ライダーやらウルトラマンの全員集合とは全然わけが違うもの。
 だって、マーヴェルの中ではスパイディだけが権利関係いちばんややこしかったわけでしょ?
 そこまでを取り込んで、MCUにしちゃってる。
 「ライスパ」3作と、「アメスパ」2作、合計5作、過去作をMCUと地続きにしちゃった。
 ある意味、いきなりMCUが5作(本作もあわせると6作)増えたってことでしょ。凄すぎる。
 
 そこへもって、「ぺこぱ」のような優しい解決法を取るじゃないですか。
 そりゃ、泣きますわ!
 
 個人的にいちばんヤバかったのは、トムホラ・スパイディが摑みそこねたMJちゃんをアンディ・スパイディがギリギリで救う所。あのときのガーフィールドくんの表情は今思い出して、俺、また泣いちゃいました。
 グウェン!(ToT)
 
 本作を最も楽しめるのは、ライスパとアメスパとMCU全部を観てる客のはずじゃないですか。
 そんなに多くいる筈はないけど、シネコンでは何スクリーンも同時に回してるし、客もガンガン入ってる。
 それも、何だか喜ばしいことですね。
 私は全部観てるから、めっちゃ楽しかったし、めっちゃ泣いたけど、多分本作だけ観た人にも楽しめるように作ってあるんでしょう。
 その感覚は私には味わえないけれど。
 あっ! ドクター・ストレンジさんに頼んで、忘れさせてもらったら味わえるのか!
 ちょっと、カンバーバッチさん、お願いします!
 
 どうでもいいけど、カンバーバッチって「缶バッジ」をいつも連想するよね。