柏エシディシ

ファースト・カウの柏エシディシのレビュー・感想・評価

ファースト・カウ(2019年製作の映画)
3.0
いやぁ〜やっと公開。しかし長年、本国や世界的な評価の割には日本国内では不遇であったケリー・ライカートの作品がそれなりの規模で全国公開されるのだから祝福しなければならない。
そんなこちらの期待もさっと軽やかにかわしてみせるの様な、ライカートらしいミニマリズムの究極の様な小粋な作品。
「ミークスカットオフ」の様なマスキュリアンから西部劇を脱構築する物語で、「ウェンディ&ルーシー」や「オールドジョイ」などの過去作も緩やかに想起させられるケリー・ライカートの集大成的な一本。
また、横軸で、リリーグラッドストーン(キラーズオブザフラワームーン)、ゲイリーファーマー(デッドマン)ともリンクし、映画史を何気に俯瞰する様な深みと広さまで感じさせる。
物語自体はほんの数行で書き済ませられるが、当たり前だが、観てみないとその実態が判らない、体験した事にならない豊かな時間。
「あら劇場間違えた?」となってしまう冒頭から、幕引きの潔さと余韻まで。良い。
ライカート作品の動物たちは、いつも自然で、可愛い。
新作「ショーイングアップ」も観に行かなければ。

全然個人的な感想としては、主演のジョン・マガロが、サッカー選手の元ナポリ所属ベルギー代表のメルテンスに似ていて、終始「…チーロ(メルテンスの愛称)」と思って見てしまったこと。
陽気な選手なんですが、インタビューの時の穏やかな語り口がクッキーにそっくりだし。
(ちなみに、メルテンスはあのダルデンヌ兄弟もお気に入りの選手。良ければチェックしてみて。以上、蛇足でした)
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