柏エシディシ

フローレスの柏エシディシのレビュー・感想・評価

フローレス(1999年製作の映画)
3.0
アマプラに流れてきて、お、懐かしい。ってなって見てしまった。ジョエル・シューマカーっぺえ!この感じ。90年代の空気感。たまらん。

それまでも端役で印象的な役柄の多かったフィリップ・シーモア・ホフマンの評価が決定的となったというか、日本の映画ファンの間で広く認知された作品のひとつ。
どちらが先に日本公開だったか忘れたけれど、「マグノリア」と本作以降、主演格の作品も多くなった様に思う。
(しかしこの頃の彼のフィルモグラフィを振り返ってみると、ホント凄かったのが判る。
どの役も出演時間は短かったり、有り体の敵役も多いのにどれも印象的だもの。私のお気に入りは「ツイスター」のクレイジーな彼。)
相手役がデニーロで、彼も神経麻痺に苦しむ難しい役柄をこなしていてサスガなのだが、それを演技の力でPSHが完全に食っちゃってる。
今となっては、本作の様な一見奇抜な役回りやマッチョでイヤミな役柄でさえも、その裏面内面に繊細さが垣間見えるのが、この人の演技の魅力の秘密だったのだ、と思う。
彼がああいう最後を選んだことで、余計にそんな事を思ってしまうのかもしれないが。
母親の葬式から帰ってきて、いつもと違う格好で、心情を吐露するシーンには落涙してしまう。

映画全体としては、どっちらかというと、とっ散らかった印象。
犯罪サスペンスと主演ふたりのドラマが上手く絡まず、豊富な登場人物やエピソードを整理しきれていない印象もあるし、ドラァグクイーンたちの描写もややステレオタイプ的で、今時分の目線で見ると隔世の感あり。
しかしラストのデニーロの台詞のイカしっぷりといい、どこかゴチャついた中でも溢れるこの頃のカラッとした爽快感は、確かにこん中で自分は育ったという記憶が呼び起こされて心が疼く。
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