ベイビー

リチャード・ジュエルのベイビーのレビュー・感想・評価

リチャード・ジュエル(2019年製作の映画)
3.7
これがマスコミのやり方か
これがFBIのやり方か

マスコミに正義がないのは分かりますが、FBIまで正義を見失ってはどうしようもありません。こんなにも杜撰な初動捜査が実際に行われていたなんて、呆れを通り越して怒りが込み上げてきます。

プロファイリングに当てはまったからといって、証拠もない人物を安易に犯人だと決めつけていいはずもなく、しかもプライドが高いばかりで自分たちの非を認めようとしないFBIの面々。マスコミも同罪ですが、証拠不十分のまま、適当に人物像だけで犯人だと決めつけるだなんて、サスペンスドラマの冒頭で「この人が怪しい」と呟いてた僕の母親と何ら変わりませんよ。

終始観ていて、そんな不条理にイライラさせられるストーリー展開でしたが、随所でホッコリ和ませてくれたのは、リチャード、母親、弁護士ワトソンという無罪を主張する人たちの存在でした。

自分が容疑者扱いされているにも関わらず、国家権威に従事するあまり、彼らの要望に対してつい従順に応えてしまうリチャードの人といての純粋さ。思わず笑ってしまいます。ナイスキャラ。

それと併せてリチャードを見守る母親の優しさを見ているだけで、身につまされるというか、やるせないというか、子を心配する親の思いがひしひしと伝わってきました。出過ぎず、出しゃばらない優しさ。息子を疑わない強さ。この母親からテロリストが産まれるはずはありません。

そんなリアルなキャシー・ベイツさんの演技が一層リチャードを応援する気持ちにさせてくれました。本当に素晴らしい演技でした。それとリチャードを演じたポール・ウォルター・ハウザーさんは初見なんですが、キャラ作りがバッチリですね。二人共いい役者さんです。

そして何と言っても忘れてならないのが、ワトソンを演じたサム・ロックウェルさんの存在。本当にああいった役をやらせると巧いですよね。いや、もう最高過ぎます。

「プールサイドデイズ」や「スリー・ビルボード」や「ジョジョ・ラビット」などでも見せてきたとおり、飾らないというか、裏表がないというか、無骨で不器用な面もあるが、実は正義感に溢れ根っこは優しい男。という役をやらせると、彼の右に出る者はいません。

とても素敵な役者さん。本当に大好きです。
ベイビー

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