もやし

リチャード・ジュエルのもやしのレビュー・感想・評価

リチャード・ジュエル(2019年製作の映画)
4.8
特別な映画、とかではないかもしれないけど、穏やかなエンドロールずっと聞いてるとしみじみとした気持ちになるね。なんかハッピーでもバッドでもない独特の読後感。人生にハッピーもバッドもないのかもね。

内容関係ないけどなんかこの時期に公開されてた映画って個人的には特別で。
あのときはコロナの気配もなかったし、純粋に見る映画見る映画に興奮できてたな、って。
この直後からどんどんと変な流れになってきて、こんな世相になってしまって自分の生活も色々変わって。映画に対する感情はだいぶ違ったものになってしまった。そういう意味ではこの時期の映画はすごく懐かしい、というか特別、です私は。



映画に関してはとにかくリチャードが良い人すぎてねー
正義感とは何ぞやだったりバッシングというものの本質であったり国における個だったり、と沢山の要素が散りばめられてるけど、あんまりそういうものを深く考えないように作られてると思う。
でもこういう様々なものに左右されてしまう現代においても、一人一人の人間で見ればこれだけ個性に溢れててドラマに溢れてて、たまらなく切なくて。そういうものをいつもこの監督の作品からは感じるので好きです。


リチャードの正義感に関しては、正直この人の正義感は神的レベルに入っているので共感は全くできませんが笑、これだけの正義感を以てしても今まで散々不遇な人生を受けてきた彼の感情が爆発するシーン以降は、強烈な感激を受けるシーンがいくつもありました。

一つ一つの展開とかはこれもっと違った描き方なかったのかなみたいなシーン結構ある映画ですが、凄まじい輝きを放つシーンもすっごく多いんですよね。とてもアンバランスで良いです。


国家権力に憧れてた主人公がこの出来事で強い曇りを抱いたということが本人にとって良かったのかはわかりませんが、でも本人は事件後もちゃんと真っ当に生きていたというのが流石ですよね。


バッシングの発端を作ったあの傲慢な雰囲気の女性記者がその後自殺しているというのもこのリチャードの話に影を落としてますよね。
そしてリチャード本人も心臓が弱くとても短命だったというのも。
この映画のことを考えていると何だかとても複雑な気持ちにさせられます。人生って何て…
でもそういう瞬間のために、私は映画を見ています。
もやし

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