三畳

マローナの素晴らしき旅/マロナの幻想的な物語りの三畳のレビュー・感想・評価

5.0
開始10分で星5確定。しかも最後までずっとすごい。動く絵を浴びる映画。
もう脳へのダイレクトな刺激が嬉しくて笑っちゃった。アニメの完成度が嬉しくて笑いが込み上げることってあんまりないよね…この90分間で何回か思わず声が出た。大好き。

⓪ナイン
まず衝撃に殴られるのが最初に夜の繁華街に飛び出すところ。人のデザイン抽象的すぎ。顔の造形、手足の本数、自由すぎ。

そして犬の名前は3回変わる。

①マノーレのアナ
曲芸師マノーレは服のストライプ模様が体の延長みたいに拡張して動く!
「今のわたしは世界で一番リッチな犬!」の時にお耳がひらひらロングになるのがお揃いみたいで素敵。
マノーレに抱っこされているときは無重力で宇宙にいるみたい。

飼い主のもとを離れるとき、匂いが追いかけてくる表現が切ない。
マノーレは迷子犬の貼り紙をしていた。でも最後に匂いで反応したのはよく見たら「月のサーカス」のトラックだった…


②イフトバンのサラ
ゴミの山までおしゃれなんですけど!
イフトバンとわかりあえそうになったとき、外に宇宙が広がりかけるところが犬の期待を表してる…けどすぐに現実のパースに戻る。

一番感動したのは建築現場のデザイン。就業時間中は直線的な2Dゲーム風の絵と音楽で、休憩時間になると一転して人間らしい柔らかさを取り戻す、面白い!

おばあちゃんの顔やばい。曖昧な夢から覚める表現とか、嬉しいとき頭の周りにぽわぽわ?が舞うのとか、パニックになったらしわの集合体でしかなくなるのとかwww
クレープを焼くシーン、ボール投げのシーンでも無重力になりかけているからサラにとって幸福のイメージなんだ。

動物病院にいる欠陥だらけでキメラのような子たち。
女のたくさんの鏡がそれぞれ別の動きをしている。こんなにアニメって統合失調していていいんだ。


③ソランジュのマロナ
三度の別れを経験して、これまでのようにすぐに人を信じきる元気がなく失望した状態。少し年を取ったのか、ぶっとんだ見え方が落ち着いて絵もちょっと現実的になる。
猫の名前"マルゾフェル"
「犬の務めですから」敬礼かわいい。
きれいごとでは腹は膨れず貧しい一家は大罪を犯しかけるが、少女が女性に成長するほどの時間を過ごしてこの家族は結果的に犬の存在に癒され表情が和らぐ。でも。。。

記憶を遡りながらの猛ダッシュ。不安を煽る迫りくる建物。手書き×CGの迫力が遺憾なく発揮されまくる。


ハッピーな絵でありながら、一貫して犬が貧しく無責任な人間に飼われる暗い問題が指摘されてる。犬への愛情は嘘ではない、でも愚かな人間の気持ちは変わる。大切にしてもらえる瞬間、完璧な瞬間はすぐに去ってしまう。それでも犬は献身的に人間に忠誠を誓う。

全カット止めて見ていたい。美術館に保管されてほしい美しい。いくら検索しても画集が出てないのが不思議だ。(せめてポストカードくらい出してよー。)パンフに期待してDVDを買う!
「父を探して」が好きな人は是非に!
三畳

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